研究者たちは「内なる声を持たない人は別の方法を学んでいる可能性がある」と述べています。
実際、研究では「タスクごとに異なる指を使う」といった工夫をしている人もいました。
たとえば、絵の中から猫を選ぶタスクでは人差し指を使い、犬を選ぶタスクでは中指を使うなどです。
このような指の変更に頼ったタスク切り替えは、内言能力があるひとではあまりみられませんでした。
実験で判明した言語記憶の違いは、日常会話ではほとんど気づかれません。
しかし、内なる声の存在が実際的な行動や感情の調整、問題解決のスタイルにどう影響するかは重要なポイントです。
たとえば認知行動療法では、有害な思考パターンを特定して変更する必要があり、そのようなプロセスでは内なる声を持つことが非常に重要になる可能性があります。
内なる声を持たない人々の認知行動療法の効果を調べることができれば、個人に適した治療法の開発が進むと期待されます。
研究者たちは「研究が進むにつれ、内なる声を持たない人々がどのように独自の方法で生活を営み、問題を解決しているのかが明らかになってくるでしょう」と述べています。
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参考文献
People without an inner voice have poorer verbal memory
https://humanities.ku.dk/news/2024/people-without-an-inner-voice-have-poorer-verbal-memory/
元論文
Not Everybody Has an Inner Voice: Behavioral Consequences of Anendophasia
https://doi.org/10.1177/09567976241243004
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。