しかし最新の研究では、人口の5〜10パーセントはこの内なる声を持っていない「無内言症(anendophasia)」の状態にあることがわかりました。
また無内語症の人々は、内なる声を持つ人々とは異なる方法で情報を処理していることが示されています。
たとえば、内なる声を持たない人々は、視覚的なイメージや感覚に頼ることが多く、しばしば「言葉で説明することができず絵を描いて説明する」というパターンがみられます。
そこで今回コペンハーゲン大学の研究者たちは、内なる声の欠如が問題解決能力に与える影響を調べることにしました。
最初の実験では、参加者が「はなび」「はなみ」「はなぢ」「はなれ」など、音声的にも綴り的にも似ている単語を順番に記憶しました。
研究者たちは「これは誰にとっても難しい課題ですが、内なる声を持っていない場合、頭の中で自分に言い聞かせる必要があるため、さらに難しいのではないかというのが私たちの仮説です」と述べています。
実験結果から、内なる声を持たない人々の単語記憶能力が著しく劣っていることが示されました。
同じことが、参加者が絵に韻を踏む単語が含まれているかどうかを判断する課題にも当てはまりました。
たとえば、「ふくろ」と「ふくろう」の両方が書き込まれている絵などです。

内なる声を持つ人は絵から簡単に「ふくろ」と「ふくろう」を選び取るすることができました。
しかし内なる声がない人々は音や韻を比較して判断するのに苦労していることが示されました。
一方で、異なるタスクを素早く切り替えたり、似た図形を区別したりする際に内なる声がどう役立つかを調べた他の2つの実験では、内なる声がある人とない人の間に違いは見つかりませんでした。
以前の研究では、こうしたタスク切り替えや図形の区別でも内なる声が重要な役割を果たすことが示されていましたが、これら2つは成績には反映されなかったのです。