世界で話題になっている米中貿易摩擦。国内外のニュースを読み解くとき、米中貿易摩擦についての正しい理解が必要になることも少なくない。なぜトランプは米中貿易摩擦を起こしたのか。これまでの流れと最近の動きを解説する。

米中貿易摩擦の勃発のきっかけはトランプ政権にあり

名目GDP(国内総生産)ベースで、アメリカは世界1位、中国は世界2位の経済大国だ。両国の貿易摩擦は、日本を始め両国と経済的な結びつきを持つすべての国にさまざまな影響を与えることは間違いない。

米中貿易摩擦とは貿易の不均衡などをきっかけとした両国の対立のことで、2018年7月に始まった。アメリカが中国からの輸入品に制裁として高い関税をかけ、これに対して中国政府も報復関税で対抗している。アメリカ政府による制裁関税は、去年から今年にかけて第1弾から第4弾まで実施され、中国もこれに対して即時報復関税を発動している。

米中貿易摩擦が起きた背景は複数ある。前述の貿易不均衡については、アメリカにおける対中貿易赤字が近年増加傾向にあり、トランプ大統領はこの不均衡を是正することで自国の企業や産業を守ろうとしている。アメリカの貿易赤字において、対中赤字は2018年時点で全体の約5割を占めている。

アメリカが主張する中国による知的財産権侵害問題なども、米中貿易摩擦を引き起こした一因だ。アメリカは、これまでもたびたび中国のサイバー攻撃やスパイ行為を批判してきた。中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)に対しては、安全保障上の脅威があるとして輸出禁止措置を発動している。

去年発動した制裁第1~3弾で対象品目が徐々に拡大

アメリカによる最初(第1弾)の制裁は2018年7月に実施され、半導体や自動車、産業用ロボットなど800品目以上に対して25%の追加関税をかけた。これに対し中国は、アメリカが第1弾の制裁措置を行った同日に牛肉や自動車などの500品目以上に同じく25%の追加関税をかけるという報復措置を取った。

第2弾は翌8月に実施され、トランプ政権は25%の追加関税をかける品目をさらに拡大し、プラスティックやゴム製品、通信部品なども対象とした。中国も同様に25%の追加関税の対象品目を拡大するかたちで応戦している。

9月の第3弾では追加関税の対象品目が一気に増え、アメリカ政府は水産品や農産品、家具など5,000品目以上を対象に10%の追加関税を決め、中国も同様に対象品目数を増やして対抗した。これが去年1年間の報復関税の内容だが、「いたちごっこ」であることがわかるだろう。

制裁関税第4弾も発動、今後の見通しは?

今年9月、トランプ政権は制裁関税の第4弾を発動した。

内容は、第3弾で対象品目に加えた家電や消費財などに15%の関税を上乗せするというものだ。10月には一部品目の追加関税を25%から30%に引き上げ、さらに12月にはノートパソコンやスマートフォンなどについて10%から25%に引き上げる予定だ。

第1~3弾のときと同様、中国もアメリカの制裁第4弾に対して報復課税を発動し、アメリカの大豆などの農産品に関税を課した。

米国の制裁と中国の報復は今後さらに過熱する可能性があるが、「落としどころ」は見えているのだろうか。米メディアの報道によれば、アメリカが関税措置の一部撤回などに向け、中国との暫定合意に向けた話し合いの場を設けることを模索しているという。

いずれにしても、米中貿易摩擦は米大統領選が行われる2020年に持ち越されることは間違いない。引き続きトランプ政権の動向から目が離せない。

文・MONEY TIMES編集部
 

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