記憶のズレと違和感の数々
事故を境に、母親の記憶には周囲と一致しない違和感が生じ始めた。たとえば、幼少期から覚えていた教会の賛美歌や聖書の一節が、自分の記憶と実際の内容とで微妙に異なっていた。周囲の人々と話しても、その違いは明らかだった。
さらに1989年、中国・北京の天安門事件をテレビで見た際の記憶も大きく食い違っていた。多くの人が「戦車の前に立ちはだかった一人の男性が、戦車を止めた」と記憶しているが、母親の記憶では、その男性は戦車に轢かれて命を落としていたのだ。しかもそのとき、夫がその場面を見て泣いたことまで鮮明に覚えているという。

(画像=イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI),『TOCANA』より 引用)