ところが、ごくまれなタイミングで「時間特異点」という現象が起こります。
これは、想像を絶するほど短い時間内に宇宙全域へ膨大な質量とエネルギーが一気に流れ込む、いわば無数の“ミニ・ビッグバン”が同時多発するようなイベントです。
まさに嵐のように物質とエネルギーが空間を満たし、その継続時間はまばたきより短いかもしれません。
第三段階:一瞬で進む“膨張ブースト”
この大バーストの瞬間、宇宙の“布”が一気にふくらみます。
物理学では、こうした「押し広げる力」をしばしば“負の圧力”と呼び、暗黒エネルギーの効果に似ていると説明されます。
イメージとしては、風船に急に強く息を吹き込むと一瞬でサイズが大きくなるのと同じです。
このとき宇宙がジャンプするように膨張し、結果的に“通常の物質”だけでは説明しづらいほど加速的な広がりを見せるのです。
第四段階:銀河の種がまかれる
バーストによって宇宙全体へほぼ均一に物質がばらまかれますが、わずかに“むら”が生じます。
密度がほんの少し高い場所ができると、そこは重力で周囲の物質を引き寄せ始めます。
数百万年から数億年という長い時間をかけて、こうした濃い部分が徐々にまとまり、最終的に銀河や星団などの大規模構造へと成長していくのです。
いわば、各バーストのたびに“宇宙の種”がまかれているようなイメージでしょう。
これ自体は従来のビッグバン理論で語られる「原初ゆらぎ」の役割とよく似ています。
第五段階:再び静寂へ… そして繰り返し
バーストが収まると、一時的に増えたエネルギーは薄れ、宇宙には再びのんびりした膨張期がやってきます。
しかし、次のバーストが起これば再度“大ジャンプ”が起き、新たな物質が供給されます。
これが何度も重なると、膨張の歴史はなめらかな曲線ではなく、一段ずつ上へ飛び上がる“階段状”になるわけです。
こうして見てみると、「ビッグバン+暗黒エネルギー」という従来の描き方が“坂道を登り続ける”イメージだとすれば、この“段階的バースト”モデルは“階段を上がっている”イメージに近いといえます。