つらい気持ちをノートにぶつけたら、心がスッと軽くなった──そんな経験があるかもしれません。
しかし最近では、逆に「うれしかったこと」「感謝している人」「理想の未来」などポジティブなことを書くことで、心の健康や幸福感を高められるという研究が注目を集めています。
英ノーサンブリア大学(Northumbria University)の研究チームは、これまでに発表された51件の科学論文をもとに、「ポジティブなことを書き出す方法」がもたらす効果について系統的レビューを行いました。
その結果、特定の手法を使えば、誰でも簡単に「幸福度」を高められる可能性があることがわかってきたのです。
研究の詳細は2025年5月21日付で科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されています。
目次
- 何を書けばいいのか?
- 特に効果のある2つのテーマがあった
何を書けばいいのか?
自分の感情や経験をありのままに書き出す心理療法は「エクスプレッシブ・ライティング(Expressive Writing)」と呼ばれています。
従来は、心の傷やストレスについて書くことで、感情の整理や回復を促す「ネガティブな経験や感情の開示」が主流でした。
自らのネガティブな胸の内を吐き出すことにより、メンタルヘルスを長期的に改善できることが示されていたのです。
しかし、こうした方法には一つのリスクがありました。
それは、ネガティブなエクスプレッシブ・ライティングが短期的にはネガティブな感情を強めてしまう可能性があったことです。

そこで近年注目されているのが、「ポジティブ・エクスプレッシブ・ライティング(Positive Expressive Writing)」です。
これは以下のような前向きなテーマを深く掘り下げて書くことを特徴とします。
・「最良の未来の自分(Best Possible Self)」
・「感謝している相手への手紙(Gratitude Letter)」