地元の博物館にあったものが、実はとんでもなく珍しい宝物だった。

そんな出来事は稀に起こるものです。

2025年5月、慶應義塾の研究チームが発表したのは、兵庫県新温泉町で37年前に発見された蝶の化石が、実は約250万年前の新種であり、しかも世界最大の蝶の化石であるという驚きの研究成果でした。

この研究は、日本古生物学会の国際誌『Paleontological Research』にて、2025年5月2日付でオンライン公開されました。

目次

  • チョウの化石は珍しい!37年前に見つかった化石の正体は?
  • 約250万年前の新種と判明!世界最大のチョウ化石を「カミタニオニミスジ」と命名!

チョウの化石は珍しい!37年前に見つかった化石の正体は?

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チョウの化石は珍しい / Credit:Canva

チョウのように軽やかで繊細な生き物は、化石になりにくいことで知られています。

その理由は明快です。

まず、体が非常に軽く、翅には鱗粉(りんぷん)という微細な粉があるため、水に沈みづらく、腐敗もしやすいのです。

たとえ運良く水に沈んだとしても、魚などに食べられたり、バクテリアによって分解されたりして、原形をとどめることは稀です。

実際、世界中で知られている蝶の化石は80例ほどしかなく、成虫の化石は65個しかありません。

また、それらのうち名前が付いているのは43種にすぎません

21世紀に入ってから新種として記載された成虫のチョウ化石は、これを含めてわずか3例しかありません。

そんな中で、現在ある化石に注目が集まっています。

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化石の写真(腹面側) / Credit:慶應義塾

その化石とは、1988年に地元・兵庫県の高校教師であった神谷喜芳氏によって発見されたもので、「おもしろ昆虫化石館」という地域の博物館に保管されていました。

おそらく当時の技術では詳細な同定ができなかったと考えられますが、正式な記載がないまま、その博物館で37年の時が過ぎていました。