この分類は非常に有効である一方で、いくつかの課題も存在しています。
判断には医師の経験や精神的状態が大きく影響し、主観的なぶれが生じる可能性があります。
また、外見上は軽傷に見えても内出血や脳損傷といった重大な状態を見逃すリスクもあります。
さらに、煙、暗闇、騒音など、判断環境が劣悪であることが多く、精度の高い判断を困難にしています。
こうした人間の限界を補うため、DARPAが注目したのがAIと無人機の技術です。

DARPA Triage Challenge(DTC)は、「機械による正確な観察」「AIによる即時分類」「リモート環境下での支援判断」を軸に、トリアージの自動化を目指す大規模プロジェクトとして立ち上がりました。
2023年から開始されたDTCは、今後数年にわたり複数回に分けて開催され、米国防総省や医学関係者も評価に参加しています。
この挑戦は、単なる研究開発ではありません。
極限の戦場で、1人でも多くの命を助けるという極めて現実的で人道的な目標に直結しています。
AIと無人機が、医師の「目」や「判断力」の役割を果たせるのか、その仕組みを具体的に見ていきましょう。
無人機を活用した次世代のトリアージ開発へ!「DARPA Triage Challenge」進行中
DARPA Triage Challenge(DTC)は3つのカテゴリーで構成されています。
それぞれの競技は、異なる角度からトリアージ技術の可能性を押し広げようとしています。
まず1つ目が、システム競技です。

これは無人航空機(UAV)や無人地上車両(UGV)といったロボットシステムを活用する形式で、最も注目を集めています。
UAVは上空から負傷者の体温や呼吸の動き、反応の有無を赤外線や高感度マイクロホンで検出し、生存の有無や意識の状態をリアルタイムで解析します。