また、近年では育成型期限付き移籍を積極的に活用することにより、他クラブで出場機会に恵まれない選手を受け入れている。比較的早い段階から出場のチャンスが与えられることで、選手たちは実戦を通じて実力を磨き自身のポテンシャルを引き出すことができる。この「人間力の育成」と「出場機会の確保」はプロの世界で活躍を目指す若き選手にとっては大きな魅力と言えるだろう。

水戸からステップアップした選手たち
水戸での活躍を機にステップアップした代表的な選手として、現在日本代表としても活躍するFW前田大然(セルティック/スコットランド)が挙げられる。
2017年に松本山雅から期限付き移籍にて水戸に加入した前田は、3月4日のJ2第2節ツエーゲン金沢戦でJリーグ初ゴールを記録。2017年はシーズン通算で13得点を挙げている。2018年、松本山雅に復帰した前田は2019年にCSマリティモ(ポルトガル1部)、2020年に横浜F・マリノス、2022年にセルティックへ加入。その後の活躍は言うまでもないだろう。
また、オランダ1部のNECナイメヘンに所属するFW小川航基も2019年7月に当時所属していた磐田から育成型期限付き移籍で加入し水戸に約6か月間在籍していた。その後は磐田に戻り、横浜FCを経て2023年にナイメヘンへ。日本代表としてこれまで9試合で9得点を挙げる活躍を見せている。
他にも2024年に日本代表に選出されたMF伊藤涼太郎(シント・トロイデンVV/ベルギー1部)やU23アジアカップに出場したFW藤尾翔太(町田ゼルビア)などの選手が水戸への育成型期限付き移籍を経験後、海外クラブや日本代表など活躍の場を広げている。

J1に向け、水戸の次なる挑戦
連勝記録を伸ばし好調を維持している水戸。しかし、J2リーグはまだ約4割を消化したに過ぎない。現時点でJ1昇格を語るのはやや早すぎるかもしれないが、クラブは「育成型」という理念を元に今後はJ1でも通用するクラブへ進化を遂げていくことだろう。