知性がある人は見知らぬ相手にダル絡みして、相手にケチをつけることを「論破や勝利」などと認識する回路を持たない。異なる視点を脅威や迫害の対象と考えず、平和的に対話することにより当価値交換こそがお互いにとって最も合理的という思考を辿るからだ。

このように自慢話や承認欲求、コンプレックスと強い関係性がある。もちろん、本当に長年努力して相手に聞いてほしいことは誰だってあるし、その思考や価値観は健全で聞いている側も気持ちいい。

しかし、コンプレックス全開で絡むと相手にいい印象を与えない。そして両者のラインは極めて距離が近いため、取り扱いには注意が必要である。

自慢話からその人の価値観を読み取る

自慢話は不快だからスルーする、というのが一般的な対処法だろう。しかし、そこで終わらせるのは少々もったいない。自分が持ち合わせていない価値観に触れ、理解を深めることは学びやビジネスチャンスにつながることもある。

たとえば会社の同僚が「今月は◯時間も残業した」と頻繁に頑張り自慢をしてきた場合、「長時間労働を良しとする価値観は、生産性を追求する自分のような人間とは対局にある感覚だ。この人は努力するプロセス自体に評価を求めているのだな」と理解できる。

冷静に相手のニーズを解釈することで、「子供じゃないのだから頑張り自体を評価されようとするな。結果が全てでしょ」などと正論で冷たく切り捨てるのではなく、「それは大変でしたね。ぜひ休日はしっかり休んでくださいね」と相手の価値観に寄り添う行動が取れるようになる。

「相手は自分の価値観に合う、合わない」だけを評価軸にすると、ドンドン視野狭窄に陥り、結果として人が離れていく。長年続けることで、取り扱いの難しい人格が強固になる。

これが年を取ると人が離れていきやすい原因のひとつであり、ビジネスでは顧客を独りよがりに論破なんてしていたら仕事にならない。なので、相手の自慢話から自分と異なる価値観を引き出し、うまくコミュニケーションができるように学習対象にしてしまえばいいのだ。