θ波は脳の認知的負荷や疲労と関係する波で、課題に手こずったり注意力が散漫なときに現れやすいとされています。
つまり美味しさを感じなかった場合、脳は十分に覚醒せず、むしろ負担やストレスを感じて集中力が下がっていた可能性があります。
さらに別の日には、新しい参加者を対象に「とても美味しいチャーハン」と「やや美味しいチャーハン」の二種類を食べ比べてもらう実験も行われました。
各被験者が感じた美味しさの主観評価と脳波データとの相関を解析したところ、「美味しい」と感じた度合いが高いほど、脳のα波が低下し集中・覚醒状態が強まる傾向が統計的に示されたのです。
言い換えれば、食事のおいしさが増すほど脳がシャキッと冴えわたり、作業効率も向上するという相関関係が確認されました。
美味しいは認知機能を上げる

今回の研究は、短時間の食事でもその「美味しさ」次第で脳のパフォーマンスやモチベーションが変化し得ることを示した初めての報告です。
わずか数分間で脳波のパターンが変わり、続いて行われた課題の処理速度が向上したことから、味覚の満足感が脳を素早く活性化させ集中モードに入れる一因となりうると考えられます。
一般にお腹が満たされると眠気に襲われる(いわゆる食後の眠気)ことが知られていますが、それとは逆に、本当に美味しい食事であれば脳をかえってシャキッと目覚めさせ、集中力を高めてくれるのかもしれません。
特に美味しいものを食べた後に顕著だった左脳の活性化(左前頭部のα波低下)は、「もっとやってみよう!」という前向きな意欲が引き出されているサインと言えるでしょう。
研究グループは「本研究では、私たちの生活に身近な冷凍炒飯の美味しさが、食後の認知活動や作業効率に影響を与えることを脳科学的に確かめました。まだまだ検討の余地はありますが、今後の昼食の取り方などにも活用できる基礎的な研究成果の一つだと考えています」とコメントしています。