つまり内部のカウントは 24 時間弱で回りつつ、当時 1 日が約 20 時間しかなかった原始地球の昼夜サイクルに合わせて柔軟に引き伸ばし/縮めが可能だったわけです。

これは古生物学的証拠が示す「昔の地球は自転が速く、日が短かった」という事実と美しく呼応します。

この体内時計が登場したのは、大気中の酸素が劇的に増えた 大酸化イベント(約 23 億年前) の直後と見られ、“日の出を先読み”できる能力が光合成の効率を一段と押し上げ、酸素放出を加速した可能性が浮かび上がりました。

また研究グループは進化の系統をたどって、約13億年前や1億年前、そして現生(現在も生きている)のシアノバクテリアが持つ時計タンパク質も調べました。

すると、いずれの時代のタンパク質についても、ほぼ24時間に近い正確なリズムを刻む能力が確認されました。

つまり、地球の自転が徐々に遅くなり、一日が現在の24時間へと伸びていく過程で、分子時計の内蔵タイマーも自然に歩調を合わせるようにわずかずつ長くなり、最終的に地球の昼夜サイクルとピタリ同期するよう進化してきたのです。

まるで腕時計がオーナーの生活リズムに合わせて自動で時刻を微調整してくれるかのように、シアノバクテリアの時計は22億年の歳月を通じて地球の1日の長さに適応し続け、今なおきちんと24時間制を守りながら時を刻んでいる、というわけです。

これは従来研究で知られていたごく一部の種(モデル生物のシネココッカス属)だけでなく、多くのシアノバクテリアに概日時計が受け継がれていることを示しています。

しかも、そのリズムを生み出す肝心の仕組みは22億年前までにタンパク質の構造として完成されていたことも明らかになりました。

時計タンパク質KaiCはエネルギー分子ATP(アデノシン三リン酸)を分解する酵素として機能しますが、祖先型KaiCから現生型KaiCまで、内部の原子の並び(立体構造)が0.1ナノメートル(1オングストローム)レベルの精度で保たれていたのです。