22億年前の地球――一日の長さがおよそ20時間と、現在よりも短かったこの時代に、生物の「時計」が動き出しました。

日本の福井県立大学(FPU)で行われた研究によって、光合成を行うシアノバクテリア(ラン藻)の祖先が約22億年前に世界で初めての体内時計(概日リズム)を獲得し、当時の短い日周期に合わせて「次の日の出」を先読みできる分子装置を持っていたことが明らかになりました。

研究チームはこの最古の生物時計を現代に蘇らせ、試験管内でそのリズムを再現することにも成功しています。

その様子はまるで、分子でできたタイムマシンが太古の地球の夜明けを告げているかのようです。

研究内容の詳細は2025年5月15日に『Nature Communications』にて発表されました。

目次

  • 日の出を先読みせよ:謎だった時計の起源を追う
  • 22億年前モデルだけが時を刻んだ──驚きの“18時間リズム”
  • “時間を知る力”が酸素革命を呼んだ

日の出を先読みせよ:謎だった時計の起源を追う

日の出を先読みせよ:謎だった時計の起源を追う
日の出を先読みせよ:謎だった時計の起源を追う / 図1は、シアノバクテリアの「体内時計」がいつ動き始めたのかを、タイムトラベルのようにたどった一枚絵です。まず上側には時計タンパク質の“家系図”があり、そこに五つのカラフルな星がくっついています。この星は「昔のシアノバクテリアが持っていたであろう時計タンパク質」を復元した5つの年代――およそ31億年前、26億年前、22億年前、13億年前、1億年前――を示しています。研究チームは、星ごとにその古代タンパク質を実際に合成し、下側の試験管で「動くかどうか」を確かめました。波形がまっ平らなら時計は止まったまま、規則正しい山と谷が続けば“チクタク”動いた証拠です。平らだった26億年前の波が、22億年前の星では初めて大きな山と谷になり、ここで体内時計が本当に動き出したと分かりました。つまり図1は、「22億年前に時計がスタートした」という決定的瞬間を、家系図と波形のセットで誰でも見てわかるように示した図なのです。/Credit:【プレスリリース】最古の体内時計が日の出を知らせた約22億年前のある日