かつて26年間マリンランドを運営していたマイク・リデル氏も「これは想定内の藻の繁殖だ」と映像に理解を示しましたが、それでも「こうした施設に長期間シャチを閉じ込めておくべきではない」という意見には同意を示しています。

なぜシャチ親子の移送は進まないのか

実はマリンランドの運営側は、すでに複数回、シャチ親子と同施設にいる12頭のイルカたちの移送を試みています。

2024年2月には、スペイン国内の2つの施設に移送する申請を提出しましたが、スペイン政府は「施設がシャチやイルカの保護に適していない」としてこれを拒否しました。

続いて日本の施設への移送も検討されましたが、今度はフランス政府が「ヨーロッパ内で、より高い福祉基準を満たす施設でなければならない」として許可を出さず、話は立ち消えに。

最終的に、唯一基準を満たすとされたスペイン・テネリフェ島の施設への移送案も、スペイン側が「設備が要件を満たしていない」と判断し、2025年4月に拒否されました。

このように、法制度や国ごとの基準の違いが障壁となり、シャチたちはいまだ適切な移送先を見つけられないまま閉鎖された施設にとどまっているのです。

複数のNGO、たとえば「One Voice」や「シー・シェパード」などは、シャチの健康状態を確認するため専門家を現地に派遣する許可を求めていますが、これもまだ実現していません。

かといって、彼らを野生の海に放すことはできません。

この親子はいずれも人間の飼育下で誕生し、野生環境には慣れていないので、弱肉強食の自然界ではとても生きていけないと考えられているのです。