— Science News (@SciencNews) May 17, 2025
注目すべきは、その生存戦略です。
この細菌は栄養に乏しく、放射線や乾燥などのストレスが極めて大きい宇宙環境においても、「芽胞(がほう)」という強靭な休眠構造を形成し、その中で生存に不可欠な化学成分を保護することで生き延びられることがわかりました。
さらにゼラチンを炭素や窒素の栄養源として分解できる酵素を備えており、分解したものを利用して、周囲にバイオフィルム(保護膜)を構築し、外部環境から身を守る能力も持っていたのです。
このような能力は、宇宙という極限環境に適応するうえで、極めて有利に働くと考えられます。
人体に害を及ぼす存在なのか?
驚くべきことに、今回の発見は例外ではありません。
NASAの最近の調査によれば、火星探査機・フェニックスのミッションのために使用された「クリーンルーム」ですら、少なくとも26種類の未知の微生物が生息していたことが確認されています。
こうした細菌は、DNA修復能力や有害物質への耐性といった特殊な遺伝子を持ち、私たちが「無菌」と信じていた空間でも生き残ることができるのです。

また宇宙における微生物の存在は、単なる「汚染」の問題では済まされないかもしれません。
一部のナイアリア属細菌は、免疫力が低下した患者に対して敗血症を引き起こすことが知られています。
今回発見されたナイアリア・ティアンゴンゲンシスが、宇宙飛行士の健康にどのような影響を与えるかは未知数ですが、潜在的なリスクとして無視はできません。
とはいえ、こうした微生物の研究は、逆に大きな可能性も秘めています。
宇宙環境に適応する細菌の性質を解明することで、例えば放射線耐性をもつバイオ素材や医療用途への応用など、地球上では実現できなかった新しい技術の扉を開くことにもつながると期待されています。