黒坂岳央です。
SNSを見渡すと、「働いても給料は変わらない」「頑張った分だけ損をする」といった投稿が散見される。
こうした不満が蓄積すれば、「どうせ頑張っても意味がない」という“燃え尽き症候群”が蔓延しても不思議ではない。
しかし筆者はこの投稿や風潮を、「間違い」と考える。それどころか、真摯に業務へ向き合うビジネスパーソンや、健全な雇用を創出する企業にとって看過できない害悪とすら言える。
その根拠のひとつは、多くの人が気づかないまま働いている「給与の構造的な前払い性」にある。

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サラリーマンは“報酬の先取り”である
企業に入社したその日から、サラリーマンは時給換算で給与を得ている。たとえ最初の数週間が研修やOJTであっても、売上に直結しない時間であっても、会社は「人材への先行投資」として報酬を支払っている。
この構造を理解しないまま働き続けると、
「何もしなくても給料が出る」 「座っていればお金がもらえる」
といった誤解を抱くことになる。かつて筆者が派遣社員として働いていた際、この感覚に陥ったことがある。
スキルアップ研修の時は「ラッキー」と思っていたし、繁忙期に出社すると「損をした」と思っていた。だが今考えるとそれは極めて危うい認識であった。
冷静に考えれば当たり前だが、給与の原資はワーカーによる粗利から来ている。だが給与が前払いされる制度からくるタイムラグが、本質的な感覚のズレを生み出している。
仕事は価値の先出しが基本
上述した通り、サラリーマンは給与が確保されているので、「頑張っても頑張らなくても給料は同じ。なら楽して給料をもらえるほうが得」という感覚に陥る人が出てくる。
だが本来、雇用形態を問わず、市場で通用する普遍的ルールは「ギブ・ファースト」、すなわち価値の先出しである。
自らの努力が正当に評価される環境に身を置くか、それとも転職市場で換金可能なスキルを磨くか。いずれにしても、「給与の先払い」に甘えるより、「リターンの後取り」を目指す方が合理的である。