もしそれが現実になれば、天体観測、宇宙探査、さらには地球環境に対しても多大な問題を引き起こすおそれがあるのです。
「これは宇宙交通の管理問題を引き起こし、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の増加に拍車をかけ、天文学や星空観察を妨げ、ロケットの打ち上げや再突入による大気汚染も悪化させます」と、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の天文学者アーロン・ボリー氏は語ります。
では、人工衛星の増加により地球にはどんな悪影響が起こりうるのでしょうか?
衛星数が増えすぎると、地球に何が起こる?
これほど多くの人工衛星が地球を周回するようになると、私たちの暮らしや科学技術にさまざまな影響を及ぼすことが予想されます。
その最大の問題のひとつが「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」です。
近年のロケットは一部再利用可能になっていますが、それでも使い捨てブースターなどが低軌道に残され、何年にもわたって漂い続けています。
こうした破片がほかの衛星と衝突すると、さらに何千もの小さな破片が生まれ、連鎖的な衝突リスクが高まるのです。
つまり、スペースデブリはネズミ算式にどんどん増え続けるというわけ。
このような事態が放置されれば、衝突の連鎖反応によって低軌道が事実上使用不能になり、人類が太陽系へ進出する道が閉ざされてしまうかもしれません。
この問題は「ケスラーシンドローム(Kessler syndrome)」と呼ばれており、すでに多くの研究者が「手遅れになる前に対策を講じるべき」と警鐘を鳴らしています。

また、人工衛星は地球の地表に太陽光を反射するため、光学望遠鏡を使う天文学者にとって大きな悩みの種です。
さらに衛星から漏れる電波が電波天文学にも悪影響を与えており、軌道上の収容能力の限界に達した場合、一部の電波観測は完全に不可能になると懸念する専門家もいます。
加えて、ロケットの打ち上げは温室効果ガスを放出し、地球温暖化の一因にもなっています。