1982年、アメリカ・シカゴを中心に起こった「タイレノール事件」は、日常的な医薬品を利用した前代未聞の連続殺人事件であり、現代の製品安全制度に大きな影響を与えた。誰もが安心して手にする薬が、命を奪う凶器に変貌したこの事件は、いまだ真相が明かされていない未解決事件である。
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きっかけは12歳の少女の突然死
事件は1982年9月29日、イリノイ州エルクグローブ村で始まった。風邪を引いていた12歳の少女メアリー・ケラーマンが、「エクストラ・ストレングス・タイレノール」を服用後に突然倒れ、病院で死亡したのだ。服用したのは彼女の両親が前日に購入したばかりのボトルであった。
この段階では死因は不明だったが、同日中にアーリントンハイツでアダム・ヤナスという男性もタイレノールを服用後に死亡。さらに彼の見舞いに訪れていた弟スタンリーとその妻テリーも、同じ薬を服用して倒れた。スタンリーは即死し、テリーは数日後に死亡した。
一連の死の共通点が「タイレノール」であると気づいた公衆衛生看護師のヘレン・ジェンセンは、ヤナス家に残されていたボトルとレシートを確認。これは偶然ではないと確信した。

(画像=By Austin Kirk – Tylenol Pills, CC BY 2.0, Link,『TOCANA』より 引用)