米中関税がひと段落し、3か月の交渉期間に入っています。ところがアメリカも中国も最終的な判断がどうなるかわからないから今のうちに第2弾で商品を輸入できるだけ受け入れる動きが出ているようです。するとどうなるか、といえばただでさえ腹いっぱい在庫を抱えているのに8月ぐらいまでに更に商品が来て倉庫からあふれるほどになる可能性が出てきています。製造するアジアの工場は当然、閑散と繁忙が激しく移り変わります。
いくら大食漢のアメリカとはいえ、そんなにたくさんの商品を食い切れるのか、という疑問もあります。アメリカ人の懐はそこまで温かいのか、と。あるいは消費者による需要の先食いが生じている可能性もあります。
パウエル氏はこの点を非常に気にしているのです。JPモルガンのダイモン会長も「アメリカのリセッションの可能性はまだ残る」とコメントしています。
経済というのは割とセンシティブなもので平時にスムーズに流れていれば様々な経済予測が経験則から占えます。ところが今は下水管がところどころ詰まっていてそれが一気に流れたり、また詰まったりの繰り返しになっているのです。この不均衡な需要と供給は市場のボラティリティが上がりやすくなり、読めない事態になりやすくなります。
賢い消費者は値上がりする前に買いだめするかもしれません。しかし、金銭的に余力がなければ買いだめすらできません。またすべての消費者が賢く、保守的な行動をするわけでもないのです。とすれば消費行動はあくまでもその時々の雇用情勢と賃金の動き、社会の動静と雰囲気次第ともいえます。また勤労所得による消費ばかりではなく、投資収入が人々のメンタルに大きく影響するので不動産市況や株式市場がポジティブに展開するのが必須条件とも言えます。
トランプ氏は原油は高すぎる、だからアメリカで掘って掘って掘りまくるのだ、と言っています。トランプ氏のそこに勘違いがあるように見えます。株価は健全なインフレになれば高くなりやすいという大原則があります。特に原油と銅などの資源が値上がりすることで株価も上昇し、景気の実感もわいてくるのです。原油の価格は下げてはダメなのです。70㌦台の心地よい水準にすべきなのです。それを大幅に下回る今は逆に景気が下押しするリスクが当然出てきます。アメリカの中でリセッションはもうない、とするレポートも散見できるのですが、ダイモン会長がここで戒めをしたのは「この経済はそんな簡単なものじゃない」ということを示唆しているのでしょう。