地球は非常に巨大なため、氷の融解で起きる質量移動などは大した影響がないようなイメージを持ってしまうかもしれません。
しかしその影響は軽微ではありません。
たとえば指の上でバスケットボールやコマを回す場面を想像してください。

ボールが指の上で安定して周り続けられるのは、回転軸に対してボールやコマの質量分布がおおむね均等であるからです。
ですがもしボールやコマの一部に質量を加えたり、逆に取り除いた場合、変化した重量が極微量であっても急速にバランスを失い、大きな軸のぐらつきに繋がります。
実際地球でも、GPSなど極めて高精度の観測機器の登場により、人間の活動による僅かな質量変化が地軸の傾きに明確な影響を与えている様子が次々に明らかになってきました。
そこで今回テキサス大学の研究者たちは、人類による地下水のくみ上げに着目しました。
地下水のくみ上げによる質量移動は地球全体の重さと比べればわずかな量です。
しかし地下水くみ上げによる影響を元に戻すには、(原理的には)同じ量の水を地下に戻すという「非現実的」な作業が必要となり、事実上地軸の傾きに与える影響は半永久的なものになりえます。
調査では1993年から2010年までの極の動きに対して、氷の融解やダム建設、貯水池など地球表面の水の動きが与えた影響を正確に予想する計算モデルが作成されました。
しかし氷の融解やダム建設などによる質量移動だけでは、実際に起きた極の移動を十分に説明できませんでした。
簡単に言えば、「氷の融解やダム建設による影響により極が1m動いているハズなのに、実際の移動は2m起きていた」といったように、シミュレーションと実際の観測結果にズレが生じたわけです。
そこで次に研究者たちは、1993年から2010年の間に地下から汲み上げられた、およそ2150ギガトンに及ぶ水の質量移動をモデルに付け加えました。