消費減税をめぐる議論は、意外な展開を見せてきた。当初は全野党が減税の大合唱で、石破政権も何か減税を打ち出さざるをえないだろうと思っていたが、今のところ森山幹事長も小野寺政調会長も「消費税は社会保障の貴重な財源なので減税できない」という正論で一致している。

他方、国民民主党は比例代表候補の「四人衆」が悪評サクサクで、失速ぎみだ。特に山本太郎氏と一緒にバラマキ路線を走っていた須藤元気氏を立候補させるのは「いよいよ国民民主もれいわと同じ無責任バラマキ路線か」という憶測を呼び、コア支持層が離反している。

自民党vs無責任野党

根本的な問題は、国民民主党が掲げている社会保障改革と消費減税が矛盾していることだ。これから高齢化で社会保障支出は毎年3兆円増えるともいわれているのに、その財源となる消費税を毎年13兆円も減らしたら、社会保障財政は破綻してしまう(減税が2年で終わる保証はどこにもない)。

特に危機的なのは、未納が半分を超えてボロボロの国民年金である。これを放置すると、就職氷河期世代が大量に無年金老人になる。解決する一つの方法は、厚労省の年金改悪法案のように厚生年金積立金を流用することだが、これは自民党にも拒否された。野党がこれを復活しろと要求しているのは、とんでもない話である。

バーナンキの「ヘリマネ2.0」

もう一つの方法は、インフレによる実質債務のデフォルトで年金債務を減らすことだ。これはシムズも安倍首相に提案したが、2017年の日銀講演でバーナンキが同じような話をしている。要約すると、

2013年以降の日銀の「量的・質的緩和」は失敗した。 高いインフレ率は景気回復や財政健全化に役立つ。 日銀はインフレ目標をもっと高めるべきだ。 政府が国債を増発して日銀が買い取ることも考えられる。 このためには政府と日銀の協調が必要だ。

要するに日銀が国債を直接引き受けてマネタイズし、2%より高いインフレにして実質債務をキャンセルしようという大胆な提案だ。この発想はフリードマンのヘリコプターマネーに近いが、バーナンキは「ヘリマネではない」という。