ゼレンスキー氏は2年前のフランシスコ教皇との対面会見では厳しい表情だった。それに比べ、レオ14世との電話会談の内容を語る同氏には喜びが溢れている。
フランシスコ教皇の対ウクライナ政策を批判するつもりはない。多分、フランシスコ教皇とレオ14世にはウクライナ情勢への受け取り方で大きな相違はないはずだ。ただ、ウクライナ国民の痛みに触れたレオ14世の言葉がゼレンスキー氏の心を捉えたのだろう。
教皇レオ14世は15日、バチカンでウクライナ・ギリシャ・カトリック教会のキエフ大司教スビアトスラフ・シェフチュク氏を迎えている。そしてシェフチュク大司教もレオ14世との会見に感謝の意を表しているのだ。
同教会のプレスリリーフによると、「新教皇は、サン・ピエトロ広場での最初の公開正午の祈りの中で、ウクライナ国民の苦しみをはっきりと思い起こし、真の、公正な、永続的な平和を求めるとともに、すべての囚人の釈放と拉致された子供たちの家族の元への帰還を求めた。これらの言葉はウクライナ国民の傷ついた魂に真の精神的な慰めとなった」と説明している。
トルコのイスタンブールで16日、3年ぶりにロシアとウクライナ間の停戦に関する直接交渉が行われた。ただし、プーチン大統領とゼレンスキー大統領は同協議には参加できなかったこともあって,協議の大きな進展はなかった。外電によると、軍事的に攻勢するロシア側の過大な領土要求と威喝にウクライナ側が強く反発して協議は終わったという。
ところで、ウクライナの停戦交渉でレオ14世が貢献できる機会があるだろうか。考えられるシナリオは、レオ14世がロシア正教会の最高指導者モスクワ総主教のキリル1世と会見し、ウクライナの停戦実現のために説得することだ。
キリル1世はプーチン大統領のウクライナ戦争を「形而上学的な闘争」と位置づけ、ロシア側を「善」として退廃文化の欧米側を「悪」とし、「善の悪への戦い」と解説してきた。キリル総主教は2009年にモスクワ総主教に就任して以来、一貫してプーチン氏を支持してきた。キリル1世はウクライナとロシアが教会法に基づいて連携していると主張し、ウクライナの首都キーウは“エルサレム”だという。「ロシア正教会はそこから誕生したのだから、その歴史的、精神的繋がりを捨て去ることはできない」と主張し、ロシアの敵対者を「悪の勢力」と呼び、ロシア兵士に闘うように呼び掛けてきた張本人だ。