バニラは同じ施設にいた数頭のチンパンジーと一緒に、フロリダ州の大西洋岸にある保護施設「セーブ・ザ・チンプス(Save the Chimps)」に引き取られることになったのです。
セーブ・ザ・チンプスは世界最大級のチンパンジー保護施設であり、研究所や動物園、ペット取引、エンターテインメント産業から引き渡されたチンパンジーを生涯にわたって保護しています。
そのチンパンジーの多くは、バニラと同じく独房のような檻の中で過ごしてきました。
施設は全部で150エーカー(東京ドームが11.5エーカー)の広さがあり、12の区域に分けられていて、それぞれに自然や遊具の豊かな環境が整っています。
施設には現在、226頭のチンパンジーがおり、性格や行動にもとづいて所属する区域が決められるそうです。

同所のディレクターで霊長類学者であるアンドリュー・ハロラン(Andrew Halloran)氏によると、バニラは標準的な手続きである検疫室でしばらく過ごした後、18頭のチンパンジーのいるグループに導入されたといいます。
そしてとうとう、バニラに人生初となる青い空を見上げる時がやってきました。
その感動の瞬間をハロラン氏が映像に収めています。
こちらです。
彼女は最初、屋外に出るのをためらっていましたが、グループのリーダーであるオスの「ドワイト(Dwight)」に促されるように外へ一歩を踏み出しました。
バニラはドワイトと抱き合った後、ついに空を見上げます。
私たちの目にも、初めて見る空に陶然としているバニラの表情が読み取れるでしょう。
口の動きに注意してみると「うわぁ」と感動が漏れ出ているようにも見えます。
その後、バニラはドワイトに案内されながら、緑豊かな草原の美しさを噛みしめるようにゆっくりと歩き回りました。
その中でバニラは何度も何度も青い空を見上げていたようです。
