私たちにとって「空を見上げる」のはごく普通のことで、特に驚きもなければ感動もしないでしょう。
しかし生まれたときから研究用に飼われてきた実験動物は違います。
28歳のメスのチンパンジーである「バニラ(Vanilla)」は一生を研究所の中で過ごしてきたため、今まで空を見たことが一度もありませんでした。
ところが所属していた研究所が閉鎖される際、新たな保護施設に引き取られたことで、ついに人生で初めて空を見ることができたのです。
その感動の瞬間が映像として収められ、大きな話題となりました。
バニラは初めて見る空にどんなリアクションを取ったのでしょうか。
目次
- 研究所の囲いの中で人生を過ごしてきたバニラ
研究所の囲いの中で人生を過ごしてきたバニラ
バニラは生まれてから2歳になるまで、ニューヨークにある生物医学研究所に収容されていました。
そこでは他の数十頭のチンパンジーとともに「鳥籠のように吊るされた小さなケージ」に入れられていたといいます。
また屋外の飼育場や運動場もなく、一日中狭く暗いケージの中に閉じ込められていました。
当時、施設のひどい状況を目の当たりにした訪問者によれば「チンパンジーたちは次第に興奮し、人に対して怯えるようになっていた」そうです。
それから1995年に、バニラは他のチンパンジーと一緒にカリフォルニア州にある動物保護施設「ワイルドライフ・ウェイステーション(Wildlife Waystation)」に移送されることに。
実験ケージよりは環境が改善されたものの、依然として屋内に収容され続け、外の世界とは完全に遮断されていました。
そこには草原も仲間との交流もなく、窮屈な思いをしながら20年以上を過ごしてきたのです。

ついに初めて空を見る!
ところが2019年にワイルドライフ・ウェイステーションが閉鎖されたことで転機が訪れます。