日本の報道でも「トランプ氏が描く『要塞国家の世界』。近隣を圧する帝国主義の台頭」、「ソフトパワー(非軍事的影響力)を失う米国」など、外国人識者の大きなコラムを掲載し、大きな視野からの問題提起は参考になります。繰り返しますと、日々の報道でも、センセーショナルにならず、トランプ氏が仕掛けてくる「罠」にはまらず、「報道しない自由、無視・軽視する自由、検証を繰り返す報道」が必要なのです。
典型的なケースは米中貿易戦争です。双方が懲罰的な関税を段階的に積み上げ、最終的には約150%に達しました。対中政策がトランプ氏の最大のテーマであったにせよ、150%などという高関税は非現実的で、打ち上げ花火に過ぎません。
米国のスマホ、パソコンの8割は中国製、小さいところでは玩具の4分の3が中国製という現実をみれば、貿易禁止に相当する150%関税は現実的ではありません。にも拘わらず、新聞、テレビはトップニュースでした。案の定、5月13日には、双方が115%ずつ関税を引き下げ、米国の対中は30%、中国の対米は10%に引き上げることで合意しました。
90日間の暫定合意で交渉次第では、また双方は報復を再開するでしょう。それにしても現実的な可能性を冷静に判断して、ニュース価値に沿った扱いをすべきです。メディアが政権、政府の宣伝部隊になってはいけないという反省を聞きたい、読みたい。NY株は急落、急騰(13日は1100㌦高)し、投機家はほくそ笑んだことでしょう。市場を動揺させたのは、メディアにも過剰、過大な責任があるでしょう。
過大報道と言えば、トランプ氏が大統領就任演説(1月20日)で「米国第一主義で黄金時代が今、始まる」と述べたことに反応し、新聞はトップ見出しを大々的な「黄金時代」で飾りました。就任100日の評価は「トランプ氏の登場で、世界は新たな混乱の世紀を迎えた」です。劇場型のトランプ氏の言動を真に受けてはいけない典型的なケースです。