「撤退しないのなら、ロシア国民が立ち上がってプーチン政権を倒すだけだ」と主張する方々も多々いらっしゃる。しかし残念ながら、3年以上戦争を続けてきてその予兆はない。むしろ最初の1年間のほうが可能性があったように思われる。私が「ロシア・ウクライナ戦争の峠」と呼んでいる2023年春以降には、めっきりロシア国内の反政府運動も見られなくなった。

私が別途「The Letter」で指摘しているように、ロシア占領地域で、目立った反ロシア運動が見られないことは、かなり重要な点だ。この事情は、ロシア国民の世論にも影響を与えていると思われる。現在の占領地においてすら、反ロシア運動が起こっていないのに、どうやっていずれはプーチン政権が倒れる反政府運動がロシア国内に起こる、と断言できるのだろうか。

ゼレンスキー大統領はロシア領内施設等への攻撃にこだわっている。ロシア領が攻撃されれば、プーチン大統領の全能のイメージが崩れ、ロシア国民が立ち上がってくれる、といった期待を述べたこともある。その観点から、ザルジニー総司令官を解任して、クルスク侵攻を仕掛けた。だが、8万人近いとも言われる兵士と、大量の欧米諸国提供の最新兵器を失っただけで撤退した。

ゼレンスキー大統領は、諦めきれず、依然としてクルスク州にウクライナ兵を侵入させたり、ドローンでロシア領を攻撃したりしている。それらの多くが、ほとんど軍事的には意味のないものばかりである。