酸素がなくても進化が起きていた可能性があるようです。

デンマークのコペンハーゲン大学(KU)で行われた研究により、多細胞生物の爆発的な進化が起きた「アヴァロン爆発」と呼ばれる時代には、酸素はほとんど存在しなかったことが示されました。

これまで70年以上にわたり、高度な多細胞生物が進化するには、酸素レベルの増加が必要だったと考えられてきましたが、当時の鉱物を調べると期待していたような酸素レベルの増加が起きていませんでした。

酸素が無くても多細胞生物の進化が起きた可能性があるというのは、生命進化を考える上で非常に興味深い報告です。

この研究は202358学術『Geobiology』にて掲載されました。

目次

  • 生命進化の爆発を促したのは「酸素」ではなかった、70年の説に反証
  • むしろ酸素濃度が低いほうが進化に都合が良かった

生命進化の爆発を促したのは「酸素」ではなかった、70年の説に反証

生命進化の爆発を促したのは「酸素」ではなかった、70年来の説に反証
生命進化の爆発を促したのは「酸素」ではなかった、70年来の説に反証 / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

今から約10億年前、それまで単細胞だった地球の生物が多細胞化し、5億4200万年前に始まったカンブリア紀には、強力な捕食者としての力を有するようになりました。

これまで70年以上に渡り生物学の教科書では、この多細胞動物の劇的進化が起きたのは、地球の酸素濃度が増えたお陰であると記されていました。

比較的新しい生物の教科書でも「多細胞動物の高度化の背景には酸素濃度の急激な上昇があった」と書かれています。

実際、俊敏な筋肉や硬い骨、複雑な神経系など高度な多細胞動物が持つような組織を作るには大量のエネルギーが必要であり、そのためには酸素の強力な燃焼力に頼らざるを得ないと考えられていたからです。

しかしここ数年で発表された論文では、その常識が疑われるようになってきました。

当時の地層を調べたところ、酸素が低濃度の条件でのみ作られる鉱物が多く見つかったからです。