アフリカで誕生した人類はいつ、どのようにして南米の最南端にまでたどり着いたのか。
そんな壮大な旅の謎に、最先端のゲノム解析がついに答えを示しました。
シンガポール・南洋理工大学(NTU)の研究チームは最近、アジアから南米最南端まで約2万キロにわたる人類の移動をゲノムデータから解析。
その結果、人類は今から約1万4500年前には南米の最南端のパタゴニアに到達していたことが示されたのです。
人類はいったい、どのようなプロセスでアジアから南米へと分岐していったのでしょうか?
研究の詳細は2025年5月15日付の科学雑誌『Science』に掲載されています。
目次
- 人類は故郷アフリカからどのように拡散したのか?
- 人類はいつ、どのように南米へ移動したのか?
人類は故郷アフリカからどのように拡散したのか?
現生人類(ホモ・サピエンス)は今から約20〜30万年ほど前にアフリカで誕生したとされています。
それから長い年月を生まれ故郷で過ごした後、約6〜7万年前に人類の祖先はアフリカを飛び出て、世界各地に拡散を始めました。
その一部はヨーロッパの方へ北上して、現地にいたネアンデルタール人と遭遇し、中には彼らと異種交配する集団もいました。
その一方で、別の人類集団はアフリカから中東を抜けて中央アジア、さらには東アジアへと入っています。
移動するたびに定住して冒険をやめる集団もいましたが、反対に、冒険心に溢れた一部の人々はアジアからさらに北上してシベリアに入りました。
そして最終的には、氷河期の際に氷に覆われて「陸の橋」となっていたベーリング陸橋を渡って、シベリアから北アメリカへと流入したのです。

近年の研究で、人類が北アメリカに入ったのは今から約2万3000年前であることが明らかになっています。
しかし、これほどの長旅をしても人類の冒険心が消えることはありませんでした。