会社員の世界だけでも、このように上の世界がどこまでも広がっていった。これが経営者や投資家となれば、資産10億円以降でミドル級という感じになり、平均的な人からはブッ飛んだ世界に感じるだろう。
地方に来て気づいたことは、多くの人が自分たちの生活レベルに満足しているように思える。悪く言えば向上心がないとも言えるが、SNSでよく見るような「年収1000万円でも足りない!」みたいな話は聞かない。
もちろん、地方にも高収入の経営者はおり、中には年収1億円以上を稼ぎ出す人もいる。だが、地元では名のしれた人で「あそこはうちとは違うから」と彼らは比較の対象にしない。我々が大谷翔平選手や孫正義氏の収入や資産に嫉妬しないのと同じで、次元が違うと嫉妬も起きないのだ。
「だが今どき、SNSが普及しているので住んでいる場所は関係ないのでは?」と思うかもしれない。実際には大半の人はSNSを鍵アカでリアルでの連絡ツールとして活用している。
SNSに過剰にのめり込む人はビジネス目的、情報収集、もしくは孤独で承認欲求に飢えた人くらいなものでそれは全体の少数派に過ぎない。実際の生活が充実している人ほど、SNSの使用頻度は少なくリアルの人間関係を大切にしている印象がある。
親切な人達のコミュニティ
地方移住で予想外に良かった点は、人間関係の温かさだ。「田舎は排他的」と言われることもあり、ネット上では意地悪で都会人を冷遇するイメージが描かれる内容を見ていたので、筆者は移住前にこれが不安の種だった。
しかし実際には、積極的に地域の情報を教えてくれたり、困ったときに助け合える親切なコミュニティだった。
そして地方では、大きな成功や高い地位を追求するよりも、「子供と過ごす時間」「家族で楽しむ休日」といった身近な幸福を大切にする人が多い。
以前の筆者は、六本木や広尾のレストランを楽しみ、渋谷や東京ビッグサイトで開催されるイベントに行くなど、都会的な華やかさを追求する生活を好んでいた。昔から一匹狼で馴れ合いが大嫌い、どこへ行くのも一人行動だったのだ。