火星の夜空が緑色に染まりました。

ノルウェー・オスロ大学(University of Oslo)の研究チームはこのほど、NASAの火星探査車パーサヴィアランスにより、火星の地表から緑色に輝くオーロラを観測することに初成功したと発表しました。

火星では過去に、人の目には見えない紫外線でのオーロラが観測されましたが、今回は緑色の可視光で、肉眼でも見えると考えられています。

また興味深いことに、火星のオーロラは私たちが知る地球のオーロラとは大きく異なっていたようです。

研究の詳細は2025年5月14日付で科学雑誌『Science Advances』に掲載されています。

目次

  • 火星のオーロラは地球とは別物
  • 人類は火星のオーロラを見れるのか?

火星のオーロラは地球とは別物

地球のオーロラは、太陽から放出される荷電粒子が地球の磁場に導かれ、北極や南極の極地方で大気中の酸素や窒素と衝突して発光することで発生します。

しかし、火星には地球のような強い全球規模の磁場がありません。

代わりに、局所的に残された弱い磁場だけが存在します。

NASAのパーサヴィアランス探査車が今回の観測を行ったのは、2024年3月18日。火星北半球にあるジェゼロ・クレーターでのことでした。

この数日前、太陽で発生したコロナ質量放出(CME)が火星に到達し、強烈な太陽高エネルギー粒子(SEP)が火星大気に降り注いでいました。

これが火星上空の酸素原子にエネルギーを与え、可視光域の緑色の光(波長557.7ナノメートル)を放出したのです。

観測にはパーサヴィアランスのSuperCam分光器とMastcam-Zカメラが用いられました。

SuperCamは5分間の観測で緑色の光を捉え、Mastcam-Zは広範囲の夜空を撮影。

その結果、火星のオーロラは地球のような線状・帯状ではなく、空全体をほぼ均一に緑色で染めるという全く異なる姿をしていたことがわかりました。

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火星で観測された緑色のオーロラ/ Credit: ESA – Green glow in the martian night – artist’s impression(2025)