人類の医療行動の起源は、私たちが思うよりもずっと昔から始まっていたのかもしれません。

英オックスフォード大学(University of Oxford)の最新研究で、東アフリカ・ウガンダの森林に生息するチンパンジーのグループが、仲間同士で傷口に薬草を塗りあって応急処置をしている行動が確認されました。

この発見は、チンパンジーが自分自身だけでなく、仲間にも“薬”を用いてケアを行うという初めての確かな証拠です。

人類の医療行動の進化的起源への理解を深めてくれるものと考えられています。

研究の詳細は2025年5月14日付で科学雑誌『Journal Frontiers in Ecology and Evolution』に掲載されました。

目次

  • 仲間同士で薬を塗り合っていた
  • 血縁関係のない仲間も助けていた

仲間同士で薬を塗り合っていた

本調査では、ウガンダにあるブドンゴ森林にて、ソンソ群ワイビラ群という2つのチンパンジーの群れを観察対象としました。

研究チームは30年以上の記録やビデオデータに加え、2021年と2022年の4か月間の現地観察を通して、合計41件のケア行動を記録しています。

そのうち34件が自己ケア(self-care)、7件が仲間へのケア(prosocial care)でした。

自己ケアでは、チンパンジーが自分の傷を舌でなめたり、葉を使って傷口をポンポンと叩いたり、噛み砕いた植物を傷に塗ったりする様子が観察されました。

特に興味深いのはチンパンジーたちがちゃんと科学的に薬用効果のある植物を選んでいたことです。

チームが応急処置に使われた植物を後で回収し、成分を調べてみると、抗菌・抗炎症・鎮痛作用があることが確認されました。

こちらはチンパンジーが自分で傷口のケアをする様子を捉えた映像。

※ 視聴の際は音量にご注意ください。

さらに驚くべきことに、チンパンジーたちは仲間同士でも傷のケアをしていたのです。