独連邦憲法擁護庁(BfV)が2022年5月13日公表した「治安機関内の極右過激主義者、『帝国市民』、『自治市民』に関する状況報告」によると、過去3年間で警察、軍隊、諜報機関の職員の中に327人の右翼過激派、「旧ドイツ帝国市民」、「自治市民」(Selbstverwalter)が反憲法活動を行っていたという。

「帝国市民」は、ドイツ連邦共和国や現行の「基本法」(憲法に相当)を認めない。だから、政治家や国家公務員の権限を認知しない。議会、法律、裁判所といった民主的かつ憲法的な構造を認めず、税金、社会保障費、罰金の支払いを拒否している。

シュピーゲル誌によると、ドイツでは約1万6500人の「ドイツ帝国市民」がいる。その内、約900人は極右過激派だ。約1100人は合法的に武器を所持している。ドイツでは2016年10月、バイエルン州で1人の「帝国市民」が警察官を射殺した事件が発生している。

なお、ドイツ連邦憲法擁護庁(BfV)は今月2日、同国野党第1党「ドイツのための選択肢」(AfD)を右翼過激派に分類した。BfVの内部資料によると、同党が自由民主主義の基本秩序に反する活動を行っているとの疑惑が確認されたという。BfVの評価を受け、AfDの禁止を求める声が高まっている。ドイツでは旧東独の3州、テューリンゲン州、ザクセン州、ザクセン=アンハルト州の州憲法擁護庁は既にAfDを右翼過激派組織に分類して監視対象としてきたが、連邦憲法擁護庁は今回、ドイツ全土のAfDを危険団体と認定して、監視対象とすることになる。

AfDアリス・ワイデル党首インスタグラムより

AfDの思想的指導者、テューリンゲン州代表のビョルン・ヘッケ氏は、ホロコーストやナチス時代の罪を軽視または否定する歴史修正主義者であり、極右思想の中核にある「民族的純粋性」や「国家主義」に通じる思想の持主だ。今回禁止された「帝国市民」のメンバーにはAfDと密接な関係を有する者が少なくないという。