要するに「基準が緩いから危険」という単純な話ではない。問題は基準値を超えるロットが紛れ込むリスクとその監視体制の違いにあるのだ。

米国では収穫後にホスフィンで燻蒸するのが一般的だ。FAO/WHO 系列の報告や英国流通調査では、最終残留は 0.1 ppm 未満がほとんどで、「適正処理なら可食時リスクは極めて低い」と結論づけられている。inchem.org

また、SNSでは「アメリカ米はヒ素濃度が高い」という話も出ており、これ自体は間違いではないが、FDAの試験では「米:水=1:6〜10」で茹でこぼすと無機ヒ素が40〜60%減少するとある。U.S. Food and Drug Administration これは実際に家庭で手軽に実践できるリスク低減策であり、「輸入米=即アウト」ではない。

もちろん、海外米に対して消費者が不安を感じるのは自然だが、適切な調理法や検査証明の確認でリスクは最小限に抑えられることも知っておきたい事実だろう。

海外米の取り扱い

「海外米を日本米と置き換えるか否か」というゼロヒャク思考ではなく、適切に取り扱うことが必要だろう。国産米を愛好する気持ちは理解できるが、輸入米も用途に応じて活用できるはずだ。

たとえば主食用は国産または有機 JASを使用する一方で、冷凍チャーハンやカレーなど味が強い料理は基準内の輸入・ブレンド米でコストダウンをはかる。

また、海外米は炊飯前の“湯取り”を習慣化する。洗米後、たっぷりの湯で軽く煮てから通常の水量で炊くと、ヒ素・残留農薬の双方を減らせる。さらにパッケージで“検査証明”を探す。「残留農薬一括検査済」「輸入ロット番号公開」など第三者証明がある銘柄を選ぶようにすればいい。

輸入米は確かに財布を助ける。一方で安全基準がイコールなら、残る論点は監視の実効性と自衛策だ。安全か?危険か?という極論や感情論ではなく、消費者は適切な調理法を採用することで安全に海外米を利用できるはずだ。