あくびをするのはヒトだけではありません。
サルや鳥、犬猫、カエル、魚など、脊椎動物で広く見られることが知られています。
しかしこれまで、あくびの長さは同じ種内では変わらないと考えられていました。
ところが今回、北海道大学の研究チームが魚類の「イワナ」を対象に調査したところ、イワナは同じ種でも住む場所ごとにあくびの長さが違っていることが明らかになったのです。
研究の詳細は2025年5月5日付で科学雑誌『Journal of Ethology』に掲載されています。
目次
- あくびは同じ種でも同じではなかった!
- 住む環境で「あくび」も適応変化する?
あくびは同じ種でも同じではなかった!
あくびは、ヒトを含めた脊椎動物に広く見られる行動です。
これまでは動物のあくびの仕方や長さは種ごとに異なるものの、同じ種の中ではどこに住んでいても変わらないと考えられてきました。
ところが今回の研究では、その常識が覆されました。
研究チームは、北海道南部の異なる4つの河川からイワナの稚魚を134個体採集し、観察水槽で1匹ずつ9分間の行動を録画しました。
着底行動(水底に静止する状態)中と遊泳中のあくびをそれぞれ記録し、発生頻度と持続時間を比較しました。
結果として、あくびの頻度は地域による差はありませんでしたが、あくびの長さには明確な違いが確認されました。
例えば、ある生息地の稚魚は着底中のあくびが短く、別の生息地では遊泳中のあくびが長くなるなど、住む場所ごとに微妙な差異が現れたのです。

この違いは、水温や捕食者の有無といった各地域特有の環境要因によって引き起こされた可能性があります。
つまり、魚のあくびも環境に応じて進化的に調整されている可能性があるのです。
住む環境で「あくび」も適応変化する?
本研究は、動物界において初めてあくび行動の地域集団間の変異を実証した成果です。