つまり、靱帯が“少し切れている”状態でも“完全に切れている”状態でも、機能の安定を取り戻すのに約6週間近くかかるケースが多いというわけです。

反対に、軽度の捻挫(Grade I)でも2週間ほどは必要で、これも「痛みはもうないから1週間で復帰できる」という先入観とはかけ離れた数字です。

痛みが軽くても、靱帯が伸びきった状態でしっかり治りきっていないうちに負荷をかけると、再び捻ってしまうリスクが高まるからです。

実際に、足首捻挫は一度やってしまうと再発率が50%を超えるともいわれ、リハビリを中途半端に終えるほど繰り返す確率が上がると考えられています。

さらに、その結果として足首の不安定感が慢性化してしまうと、膝や腰に無理な負担をかける要因ともなり得ます。

こうしたリスクを踏まえると、“痛みの有無”だけで復帰時期を決めるのは大変危険です。

今回の研究から得られた超音波による定量データは、靱帯がどの程度回復しているかを客観的にとらえる指標として大きな意味を持ちます。

医療関係者だけでなく、アスリートやその指導者、一般の方々も、この具体的な期間を知っておくことで、復帰やリハビリの計画をより慎重に立てるきっかけになるでしょう。

痛みを合図にするだけでなく、“靱帯がしっかり元に戻るまで見守る”という視点を持つことが、捻挫からの最善の回復と再発防止につながると考えられます。

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参考文献

「たかが捻挫」じゃない!足首の捻挫 関節の安定化には最低2〜6週間かかる可能性 ~捻挫後の靭帯回復をエコーで追跡した世界初の臨床研究を発表~
https://www.kitasato.ac.jp/jp/news/20250509-01.html

元論文

Severity-dependent recovery time in acute lateral ankle sprains: An ultrasonographic assessment of talofibular displacement
https://doi.org/10.1002/jeo2.70204