サイボーグ化といえば、多くの人は電子機器を体内に埋め込むSFの世界を思い浮かべるのではないでしょうか?

しかし今回、大阪大学の研究チームは、そんな常識を覆す実験に成功しました。

なんと、昆虫に「ヘルメット」を被せるだけで行動を自在に制御できるサイボーグ昆虫を作り上げたのです。

この成果は2025年5月12日付の『Advanced Intelligent Systems』誌に掲載されました。

(※閲覧注意。本文中にサイボーグ化したゴキブリの画像があります)

目次

  • ヘルメットを被せるだけでサイボーグ化!光で昆虫を操る新技術を開発
  • ヘルメットを被ったサイボーグゴキブリの安定的・長時間制御に成功

ヘルメットを被せるだけでサイボーグ化!光で昆虫を操る新技術を開発

昆虫は地球上のすべての動物種の約50%を占める多様な存在であり、その生存能力は圧倒的です。

極限環境に適応し、極めて狭い空間も自由自在に移動できる昆虫の優れた感覚・運動機能は、古くからロボット開発のインスピレーション源となってきました。

そして近年では、昆虫そのものをサイボーグ化することで、人間の役に立てる研究も進められています。

しかし、これまでの「サイボーグ昆虫」研究では、電気刺激によって神経や筋肉に直接信号を送り、強制的に動きを制御する方法が主流でした。

この手法は確かに効果的でしたが、電極の埋め込みによる侵襲性、繰り返し刺激による習慣化(反応の低下)、高い電力消費といった大きな課題がありました。

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昆虫を電気刺激で制御するのではなく、ヘルメットを被せて光刺激で操作する新しい方法を開発 / Credit:Canva,ナゾロジー編集

そこで大阪大学の研究チームは発想を転換。

マダガスカルゴキブリ(Gromphadorhina portentosa)の「負の走光性」に着目しました。

このゴキブリは紫外線を嫌い、本能的に避ける性質があります。