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先日、「今更ですが、CO2は地球温暖化の原因ですか?」という記事を寄稿した。
今回の記事では、その疑問に対して、物理化学の基礎知識を使ってさらに詳しく回答する※1)。
大気の温度は人類が放出する物質の温度で変化する
水に熱湯を加えれば温度が上がり、冷水を加えれば温度が下がる。同じように、たとえば、石炭や石油などを燃焼したときの高温のCO2を放出すれば大気の温度が上がり、ドライアイスから昇華する低温のCO2の気体を放出すれば温度が下がる。同じCO2でも、高温のCO2ならば大気の温度は上がり、低温のCO2ならば大気の温度は下がる。
高温のCO2は空間を移動するエネルギー(並進エネルギー)の大きいCO2のことであり、低温のCO2は並進エネルギーの小さいCO2のことである。高温のCO2が大気に放出されれば、大気分子(N2やO2など)との分子間衝突によって、CO2から大気分子に並進エネルギーが移動し、大気の温度が上がる。一方、低温のCO2が大気に放出されれば、大気分子からCO2に並進エネルギーが移動し、大気の温度が下がる。
大気圧(1気圧)で常温(25℃)では、1秒間に約1億回の分子間衝突が起こっているので、CO2が大気に放出されると、ただちに並進エネルギーの移動が起こる。このエネルギー移動はCO2でなくても、H2やNH3でも起こる。大気の温度は放出される分子の温度(並進エネルギーの大きさ)で変化し、分子の種類には依存しない。
並進エネルギーだけではなく、CO2の振動エネルギーも移動する
分子間衝突によって、並進エネルギーだけではなく、CO2の振動エネルギーの移動も起こる。高温のCO2が温度の低い大気に放出されると、CO2の並進エネルギーも振動エネルギーも大気分子の並進エネルギーになり、大気の温度は上がる。
低温のCO2が温度の高い大気に放出されると、大気分子の並進エネルギーはCO2の並進エネルギーや振動エネルギーになり、大気の温度が下がる。CO2の振動エネルギーが増えても赤外線を放射することはほとんどない。もしも、振動エネルギーが増えたCO2が赤外線を放射すると、その振動エネルギーを補うように、大気分子の並進エネルギーがCO2の振動エネルギーになる。