物が永遠に存在することはありません。
私たちが暮らすこの宇宙にも、いつかすべての物質が消える時がやってくるでしょう。
宇宙から最後の物質が消えるまでの残り時間は、これまでにも試算されたことがあります。
しかし今回、オランダ・ラドバウド大学(Radboud University)の研究者らが新たに試算したところ、宇宙の物質の寿命は従来の予想より遥かに早く訪れる可能性が高いことが示されたのです。
その残り時間とは、あとどれくらいなのでしょうか?
研究の詳細は2025年2月24日付でプレプリントサーバー『arXiv』に公開されています。
目次
- すべての物質はホーキング放射で「蒸発」している?
- 宇宙から物質が消えるまでの「残り時間」は?
すべての物質はホーキング放射で「蒸発」している?
今回、宇宙の物質の寿命を試算する上で着目された指標は「ホーキング放射」です。
イギリスの著名な天才理論物理学者、スティーヴン・ホーキング(1942〜2018)は1974年、「ブラックホールが徐々に蒸発している」というそれまでにない大胆な理論を発表しました。
アインシュタインの相対性理論が唱えられて以来、ブラックホールは「あらゆる物質をのみ込み、それらを完全に閉じ込めて、自らは縮小することなく、ただただ大きく成長するのみ」と考えられてきました。
しかしホーキングの計算によれば、ブラックホールの縁で発生する奇妙な現象によって、ある粒子ペアの片方がブラックホール内に吸い込まれ、もう片方は外へ飛び出していることが予測されたのです。
これを「ホーキング放射」と呼びます。
そしてブラックホールは極めて緩やかではありますが、ホーキング放射によって最終的には消滅する運命にあるとホーキングは唱えたのです。
そして2021年の研究で、擬似ブラックホールを用いて、ホーキング放射が実際に起こりうることが報告されました(Nature, 2021)。
