またアッテンボロー氏はこう話します。

「しかも底引き網漁は多くの場合、たった1種類の魚を狙っているだけです。他の生き物はほとんどが捨てられます。

トロール船の漁獲物の4分の3以上が廃棄されることもあります。これほど非効率で無駄の多い漁法は想像しにくいでしょう」

とはいえ「希望もある」と氏は話します。

「海には驚くべき再生力があり、私たちはただその機会を与えさえすればよいのです」

海の驚異的な回復力とは?

自然の力はちっぽけな人間からすると計り知れないほど巨大なものです。

昨年、『ICES Journal of Marine Science』に掲載された論文では、海洋保護措置を導入したことで海の生態系が劇的に回復したことが示されました。

英国のライム湾海洋保護区で15年間にわたって行われた調査では、海洋保護措置の導入後に、サンゴ礁生物の数が95%増加し、魚類の個体数と多様性が驚異の400%増となっていたのです。

さらに海底が極端な嵐に対してもより耐性を持つようになり、この保護区域の継続的な回復に貢献することが確認されています。

また海のごく一部の区域を保護するだけでも、その恩恵は周囲の海域に広がり、大きな影響をもたらすことがわかっています。

保護区で生物多様性が回復すると、その効果が周辺の海域にも波及するのです。

この現象は「スピルオーバー(spillover)」と呼ばれており、保護区の周辺では漁獲効率が増加することが確認されています。

これは海底の保護が地球にとって良いだけでなく、魚を主要なタンパク源とする数十億人の生活にも良い影響をもたらすことを示しています。

『OCEAN』の予告映像はこちら。

『OCEAN』が伝えているもう一つの重要なメッセージは「海を守ること=漁業反対」ではないということです。

漁業は世界中で何百万人もの人々の主要な生業であり、実際に海洋資源の保全に最も熱心に取り組もうとしているのは、そうした漁業者たち自身でもあります。