海の表面からは決して見えない“破壊の瞬間”がついに記録されたようです。
イギリスの著名な動物学者、デイビッド・アッテンボロー氏の最新ドキュメンタリー映画『OCEAN』の中で、底引き網漁による海底の破壊が史上初めてリアルタイムで克明に撮影されました。
魚たちが迫り来る網から逃げ惑う姿は、海洋資源の危機的状況を世界に突きつけるものとして、大きな注目を集めています。
目次
- 底引き網漁が与える壊滅的なダメージ
- 海の驚異的な回復力とは?
底引き網漁が与える壊滅的なダメージ
底引き網漁は、巨大な網を金属製のビームやチェーンで海底に押し付けながら曳航し、魚介類を根こそぎすくい上げる漁法です。
この過程では、漁の対象としていないサンゴ礁や底生生物までもが破壊されます。
底引き網漁が海にもたらしている被害は宇宙からも確認できるほどです。
漁船が網を海底に下ろし、海底を引きずるたびに、大量の堆積物が巻き上げられ、破壊の痕跡となって衛星写真で捉えられます。
一部の堆積物の跡は数十キロメートルにも及び、それぞれの生態系が回復するには数年もの歳月がかかります。
2017年の研究では、底引き網漁により最大41%の海底生物が失われ、その回復には6年以上かかることが報告されました(PNAS, 2017)。
毎年、天然の魚介類の約4分の1は底引き網漁によって漁獲されており、破壊の規模の大きさを物語っています。
しかし衛星画像から見えるもの以上に衝撃的なのは、網に巻き込まれる直前の生き物たちの最後の瞬間です。
「海の表面からは、こんなことが起きているとは思いもしないでしょう」と、アッテンボロー氏は映像の中で語ります。
今回、底引き網漁が海洋生態系に与える破壊的なダメージをリアルタイムで初めて撮影した映像がこちらです。
※ 視聴の際は音量にご注意ください。
海底の堆積物が激しく巻き上げられ、小魚たちが必死に網から逃げている様子が伺えます。