Full article: Rationality and bounded rationality: you can’t have one without the other

アテンション・エコノミーにおける消費者被害

中間整理が特に注目しているのが「アテンション・エコノミー(情報過多の社会において、人々の関心や注目が経済的価値を持つという経済モデル)」の問題である。

私たちがネット上で無料だと思って使っているサービスも、実際には「個人情報」や「時間」「関心(アテンション)」を企業へ差し出している構造になっている。事業者は私たちのデータを分析し、そこから得られる広告収益などでサービスを運営しているのだ。

より多くのユーザーの注意を引こうと、過激な言説や刺激的なコンテンツが増えたり、誤情報が拡散されやすくなるというリスクも高まっている。また「無料ならいいか」と思って利用した結果、気づかないうちに個人情報が広範囲で取得され、後々トラブルになったという事例も少なくない。

こうした「無形の被害」は消費者自身が見落としやすく、気づいたときには手遅れになりかねないという深刻さがある。

明治安田総合研究所レポート「アテンション・エコノミー、リテラシー向上が不可欠」

調査会が示す今後の方向性

では、このような新しい時代の取引環境に対し、どのような対策が求められるのだろうか。

中間整理によると、まずは「消費者の脆弱性」に付け込む悪質な行為を厳しく取り締まる規制が必要だとしている。特に、AIやデジタル技術を悪用し、ユーザーに不利な意思決定をさせる「ダークパターン」などは、消費者が気づきにくいだけに、しっかりと規律を整えなければならないと指摘されている。

国民生活3月号「消費者を欺くダークパターンとは」

一方で、すべてを規制漬けにすればイノベーションの芽や利便性が失われる恐れもある。そこで、企業が自主的に取り組むソフトな仕組み、たとえば、分かりやすい情報提供や、利用者がスムーズに解約できるデザインの推奨、優良事業者のベストプラクティスを称揚する仕組みなどを組み合わせることが重要だとされている。