「もうすぐ雨が降る。匂いで分かる」みたいな発言をする人がいますが、これは本当なのでしょうか。
また「雨の日には独特の匂いがする」と感じる人も少なくありません。
実は、私たちの嗅覚は、大気現象と大地が織りなす三重奏をかぎ分けることで、雨の接近を感じ取ることができます。
雷雲で生まれるオゾン、乾いた地表に蓄えられたペトリコール、そして土壌菌が放つゲオスミン。
これら三つの香りが合わさることで、私たちは「雨の香り」を認識するのです。
目次
- 雨の香りを形作る3つの要素とは?
- 雨の三重奏を段階的に感じ取る「人間の嗅覚」
雨の香りを形作る3つの要素とは?

雨の匂いを形作る1つ目の要素は「オゾン」です。
オゾン(O3)は雷雲内で起こる強力な電気放電により大気中の酸素分子(O2)が一度分解され再結合して生成されます。
生成されたオゾンは下降気流に乗って地表付近へ運ばれ、鼻にツンとした金属的な香りとして届きます。
空気中に含まれるオゾンがほんのわずかでも、人はオゾンの匂いをかぎ分けることができます。
遠くから漂ってくるオゾンの匂いは、まさに“雨の前兆”を告げるサインなのです。
雨の匂いを形作る2つ目の要素は、「ペトリコール」です。
ペトリコール(petrichor)は1964年に名付けられた造語(古代ギリシア語の『石』と『神々の血管を流れる体液』を指す言葉の組み合わせ)であり、雨が降った時に、地面から上がってくる匂いを指して用いられます。
この匂いは、乾燥期に土壌や岩の表面に染み込んだ植物由来の油脂や微生物産生物質が、最初の雨滴の衝撃で微小エアロゾルとなって空気中に放出される時に生じます。
雨が地面を叩く瞬間に甘く懐かしい香りがふわりと立ち上り、多くの人に安心感をもたらす、ペトリコールはそんな匂いです。
