2月中旬、米トランプ政権が欧州の安全保障への関与を減少させる姿勢を示し、欧州政界に激震が走った。米国抜きの安保体制は果たしてどこまで有効なのか。

欧州指導者陣による緊急会合がいくつも開催され、「軍事力を増強する」点では一致したものの、それぞれの国の姿勢は異なる。2022年にロシアの侵攻で始まったウクライナ戦争が停戦後、英国主導で平和維持隊を派遣する計画が持ち上がったが、参加しない国もある上に今も停戦実現の見込みは立っていない。

こうした中、対ロシアへの抑止力として新たに浮上しているのが核兵器の存在だ。

トゥスク首相が核兵器所持に言及

3月7日、ポーランドのトゥスク首相は下院で演説し、すべての成人男性を対象に大規模な軍事訓練の実施を立案中と述べた。ロシアの脅威を念頭に「戦争に備えて訓練を受け、脅威に対応できる予備軍」を作ることが目的だ。対ロ最強硬派のポーランドはウクライナの隣国で、ロシアとも国境を接する。国内総生産(GDP)に占める国防費の割合が去年は4.1%だったが今年は4.7%にし、その後は5%まで増大を計画している。

トゥスク首相は核兵器保有の願望も述べた。同氏の演説の2日前、フランスのマクロン大統領がテレビ演説で、ロシアの脅威が欧州に差し迫っているとして、フランスの核兵器による抑止力を欧州に広げることを検討すると表明したが、トゥスク氏はフランスの核の傘に入る提案を「慎重に検討している」と述べ、独自の核兵器の保有にも言及した。

ウクライナ戦争をきっかけにポーランドは北大西洋条約機構(NATO)下の核共有制度に積極的な関与をしたいと述べており、ドゥダ大統領も、NATOが決定すれば米国の核兵器を「受け入れる用意がある」と表明してきた。トゥスク首相の核保有発言は一歩踏み込んだものといえよう。

マクロン大統領の提案の前には、ドイツで次期首相になると思われるメルツ・キリスト教民主同盟党首が仏英との核安保協議の開催を訴えている。