ヴォイニッチ手稿と言語の可能性

 ヴォイニッチ手稿の単語頻度がジップの法則に従うという事実は、これが単なるランダムな文字列や単純な暗号ではない可能性を強く示唆する。ある研究によれば、人間の言語における頻度順位分布はランダムなテキストとは著しく異なり、ジップの法則に見られるような特徴は、単純なランダムな文字列には現れにくい。

 さらに、ジップの法則が発見されたのは、ヴォイニッチ手稿が作成されたとされる年代よりもずっと後であるため、当時の人物がこの法則を知って意図的に模倣したとは考えにくい。これは手稿が捏造であるという説に対する有力な反論材料となる。

 研究チームはまた、手稿内の関連する単語が接頭辞や接尾辞において類似した形態論的パターンを共有していることを指摘している。これは手稿の根底にある言語(もし存在するとすれば)が、形態論(語形)と意味論(意味)の間に強い関連性を持つ可能性を示唆しており、例えば漢字のように図形的な形が意味と直結する文字体系を想起させる。

ヴォイニッチ手稿は本物の言語か?“ジップの法則”が示す驚くべき可能性
(画像=画像は「Yale University」より,『TOCANA』より 引用)