次世代エンジンを2027年に投入

 このように、電動化には可能な限り投資を絞り込む一方で、マツダは2030年の世界生産におけるEVの販売比率を25%と想定している。つまり当面はエンジン車が主流の時期が続くわけだ。これに対するマツダの回答が次世代エンジンの主流となる「SKYACTIV-Z」である。まず2027年に、マツダ独自のハイブリッドシステムと組み合わせて、次期「CX-5」から導入する計画だ。

 SKYACTIV-Zの特徴は、燃焼室に大量の排ガスを循環させる「大量EGR」という技術だ。具体的には吸気の約半分を排ガスにする。そうすると、エンジンが空気を吸い込む抵抗が減るほか、燃焼温度が下がってエンジンの冷却に伴う損失も減る。同じ燃料の量なら得られる出力も高まる。 ただし従来のように、点火プラグで燃焼室内の混合気(燃料と混ざった空気)に火をつけようとしても、排ガスがたくさん混ざっているガスには火がつかない。

 これに対してマツダは、現在実用化されている「SKYACTIV-X」にも採用する「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」と呼ぶ独自技術を発展させることで、排ガスが大量に混ざっているガスにも着火することを可能にした。現在のSKYACTIV−Xエンジンは排ガスが大量に混ざったガスを燃やせる領域が狭く、燃費向上の効果が限られていたほか、エンジンの構造が複雑で、コストが上昇するのも課題だった。

 この反省から、SKYACTIV-Zでは、広い運転領域で排ガスが大量に混ざったガスでも燃焼できるようにして高い熱効率を実現するほか、エンジンの構造も簡単にしてコストを引き下げる。マツダはこの燃焼技術を「CX-60」などの大型SUV(多目的スポーツ車)に搭載している直列6気筒エンジンや、ロータリーエンジンなどにも活用する方針だ。

 同時に、マツダは今後の規制強化をにらみ、エンジンの機種数を半数以下にする。エンジンの種類を減らすことで開発コストを下げ、生産効率も高めることで企業体質を強化する。このようにEVでもエンジン車でもできる限り開発効率や生産効率を高め、投資を少なくして電動化という大波を乗り切ろうとしている。

 ただし、自動車業界はトランプ関税という新たな課題を突きつけられている。マツダの米国販売台数に占める日本からの輸出比率はトヨタ自動車やホンダよりも多く、関税の影響も大きい。どのようにこの荒波を乗り切るか、マツダの正念場は続く。

(文=鶴原吉郎/オートインサイト代表)

提供元・Business Journal

【関連記事】
初心者が投資を始めるなら、何がおすすめ?
地元住民も疑問…西八王子、本当に住みやすい街1位の謎 家賃も葛飾区と同程度
有名百貨店・デパートどこの株主優待がおすすめ?
現役東大生に聞いた「受験直前の過ごし方」…勉強法、体調管理、メンタル管理
積立NISAで月1万円を投資した場合の利益はいくらになる?