クマノミ類はイソギンチャクと共生することで知られていますが、その触手に刺されずにいられる理由は長らく謎でした。今回、OISTの研究チームがクマノミの粘液に含まれる成分を分析し、この共生の仕組みを解明しました。

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「100年越しの謎に終止符?」クマノミがイソギンチャクに刺されない理由を科学が解明

クマノミとイソギンチャク

日本では沖縄など、暖かい海に生息するクマノミ類。スズメダイ科に属するこのグループは色鮮やかな体色に加え、イソギンチャクと共生関係であることが大きな特徴です。

通常の魚では有毒のイソギンチャクと共生関係を築くことできませんが、クマノミ類はイソギンチャクの触手に刺されることはありません。むしろ、イソギンチャクを隠れ家として利用するほか、共生イソギンチャクの種類によってはクマノミ類が繁殖場所として用いる場合もあるようです。

共生関係の謎を解く研究

このクマノミ類とイソギンチャクの共生関係は非常に有名で、これまでにも様々な研究が行われてきました。しかし、クマノミ類がイソギンチャクの触手に刺されない理由は、100年以上にわたり「謎」とされてきました。

今回、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは海外の研究機関との共同研究で、スズメダイ科の粘液を分析し、この共生関係の謎を解き明かしました(論文タイトル:Anemonefish use sialic acid metabolism as Trojan horse to avoid giant sea anemone stinging)。

<シアル酸>が共生の鍵?

<シアル酸>はほとんどの生物に存在する重要な糖分子であると同時に、イソギンチャクの刺胞の発射を引き起こす引き金であることがこれまでの研究でわかっています。

「100年越しの謎に終止符?」クマノミがイソギンチャクに刺されない理由を科学が解明ミツボシクロスズメダイの幼魚(提供:PhotoAC)

このシアル酸はクマノミ類においても内蔵に一定レベル存在するものの、体表を保護する粘液層では非共生種のスズメダイ科と比較して、極めて低いことが今回の研究で明らかになりました。