トランプ氏はまた中国向け関税交渉が進んでいることを示唆し、現在の145%は80%程度が妥当かもしれないとつぶやいています。株価がこのところ回復基調なのは以前にも申し上げた地獄に落としたあとの免罪の期待が膨らんでいるからです。一方、カナダとの交渉は決裂、こちらはまさにコンクラベになっています。アメリカ自動車業界は英国の話よりカナダとメキシコの交渉の方がはるかに重要でここでウィンウィンの結果が出るまでは株価回復が本物にはなりにくいとみています。日本との交渉はそろそろ終盤でしょうから期待先行、結果で売りになる可能性もあります。

企業買収戦線異状あり

今週は国内の買収案件の話がいくつかありました。最大はNTTによるNTTデータの買収で2兆3700億円。これは良い展開です。NTTは海外展開がヘタで、かつて海外買収で大失敗したこともありビビりになっています。また通信業界の主軸がかつての固定電話とそのインフラのレベルから高度なITサービスに転じていることを考えれば当然打って出る戦略です。もう一つの買収は三菱商事による三菱食品の買収で規模は1376億円。かつて日立がやったように上場子会社を整理することは企業体質を強化し、戦略を推し進めやすくし、かつ、世界に打って出やすく、もっと言えば買収されにくい体質になり、その上、世界からの投資対象になりやすいということです。

NTT島田明社長 同社HPより

一方、あれっと思ったのが買収巧者ニデックが敵対的買収を仕掛けていた牧野フライスのTOBを引き下げたこと。これは裁判所の判断が牧野フライスに有利な形となったことでニデックに勝ち目がないとみてあっさり身を引いたということでしょう。これは両社にとって苦渋であり、特に牧野フライスは買収防衛は成功したものの株価暴落の中、今後極めて厳しい経営が待ち受けています。日本企業はまだ猿山の大将的な発想があり、会社は誰のもの、という点で意思決定が北米のように株主よりも経営陣の意地の方が強く、それが閉鎖的にとられるケースはあります。