証券各社は当初、補償に慎重な姿勢をみせていた

 今月に入り、大手証券10社は一定の補償を行う方針を発表したが、当初、各社は補償には慎重な姿勢をみせていた。金融商品取引法では、証券会社などの金融商品取引業者が顧客の損失を補てんする行為は禁止されていることなどが背景にある。たとえば楽天証券は「総合証券取引約款」の「免責事項 第52条」で、以下の事由により顧客に発生した損失・費用については、その責を負わないとしていた。

「お客様ご自身が入力したか否かにかかわらず、第11条に規定するお客様の認証コード、ワンタイムパスワード、追加認証コード、お問い合わせ番号の一致により当社が本人認証を行い取引注文の申込みを受け付け、当社が受託した上で取引が行われた場合」

「お客様の認証コード等の本人認証のための情報または取引情報等が漏洩し、盗用されたことにより生じた損害につき、当社の故意または重大な過失に起因するものでない場合」

 だが、被害の拡大を受けて日本証券業協会は今月2日、各社の約款などに関係なく1月以降に発生した不正アクセスによる被害について一定の補償を行う方針で大手10社が合意したと発表した。楽天証券も同日、以下方針を発表した。

「今般のフィッシング詐欺等による不正アクセスにより、第三者がお客様の資産を利用して、有価証券等の売買等を行ったことにより発生した損失について、従前の約款等の定めに関わらず、お客様個別の状況に応じて、一定の被害補償を行う方針です」

「なお、不正取引被害のお申し出を頂戴しているお客様に加え、当社で確認した不正が疑われる取引についても、対象のお客様へのご連絡を予定しております」

 こうした方針を示した理由について、同社はいう。

「今般については、証券界としての信頼確保や証券市場の健全な発展のため、業界全体で協議・対応をおこなっており、その結果として、当社も賛同した対応方針が、5月2日に日証協からの発表されております。補償の対象となる期間などについては、お答えを控えさせていただきますが、今般事象の全容把握に努めると共に、お客様への個別対応・検討は真摯におこなってまいります」