世界には、未だ水不足に悩まされている地域は多く、電気も使えない状況がしばしばあります。
そんな難しい状況で、生命に欠かせない水をどのように得ることができるでしょうか。
オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT University)の研究チームは、太陽光だけで大気中の水分を吸着・放出し、飲料水を確保できる新しいスポンジ素材「WLG-15」を開発しました。
この研究成果は、2025年3月5日付の『Journal of Cleaner Production』誌に掲載されました。
目次
- 電気不要!空気中から飲料水を集めるスポンジ素材を開発
- 必要なのは太陽光だけ!夜に水を集め、昼に放出することに成功
電気不要!空気中から飲料水を集めるスポンジ素材を開発
地球上の淡水資源は限られており、干ばつや災害時にはインフラが寸断されて飲み水の確保が困難になります。
従来の空気を冷却して水滴を凝縮させる方法では大量の電力を必要とするため、停電時や電力網が未整備な地域では実用性に乏しいという課題がありました。
また、常温下で大気中の水分を吸着する技術にも注目が集まっていますが、高価な材料(金属有機構造体など)や大型システムが必要なため携帯性やコスト面で制約が残っています。
そこで本研究では再生可能かつ安価なバルサ木材を利用しています。

バルサ材は多孔質で軽量です。
研究チームは、そこに水分を強力に吸着する塩化リチウムと、太陽光を熱に変換する酸化鉄ナノ粒子を組み合わせました。
これにより、電力をほとんど必要とせず小型かつ軽量で繰り返し利用可能な大気水生成素材「WLG-15」を開発することに成功しました。
具体的には、まずバルサ材の立方体片を化学処理し、脱リグニン化。多孔質の木材スポンジにしました。