スピードは、あくまで自動車の魅力を構成する要素のひとつですが、そのいっぽうで古くから多くのエンジニアやクルマ好きを虜にしてきました。 その基準は、サーキットでのラップタイムだったり、ゼロヨン、0-100km/h加速とさまざまですが、やっぱり気になるのは最高速度。 たとえ直線番長と言われてもスピードに正義を見出し速さを求める、世界最速のクルマたちをランキング形式で紹介します。
自動車における最高速とは?
「最高速」とは、その車両が理論的あるいは実測で到達可能な最大の速度を意味します。 現代のクルマの最高速を決めるのは、エンジン出力はもちろん、空力性能、車体構成、駆動方式など、いくつもの技術要素がからみあっており、パワーがあれば良いとか、空気抵抗が少なければ良いとかいう単純なものではありません。 簡単に言ってしまえば、エンジン=パワートレインの出力を闇雲に高めただけでは、達成し得ないものが「最高速」なのです。
最高速ランキングTOP10

自動車の最高速は、いまや400km/hオーバーがあたり前で、500km/hオーバーの世界に突入しています。 このランキングでは、公道走行が可能な市販モデルに絞り、スピードだけでなく、そのクルマに搭載された革新的な技術なども解説しています。
Koenigsegg Jesko Absolut(ケーニグセグ ジェスコ アブソリュート)

ケーニグセグ ジェスコ アブソリュートは、スウェーデンのハイパーカーメーカー、ケーニグセグ社が手がけた究極のスピードマシンです。 搭載される5.0L V8ツインターボエンジンのスペックは、最大出力1,176kW(1,600bhp)、最大トルク1500Nm(E85混合燃料使用時)というもので、独自のケーニグセグ・ライト・スピード・トランスミッション(9速マルチクラッチトランスミッション)の組み合わせによって、理論上の最高速度は531km/hに達します。 またジェスコ アブソリュートは、ゼロ発進からわずか18.82秒で400km/hに到達。こちらは2024年に実際に記録されたタイムです。 ボディは、空気抵抗を最小限に抑える滑らかなボディラインと、固定リアウイングを廃して直線スピードを徹底的に追求したデザインが特徴。 ケーニグセグは「これ以上速い車は作らない」と明言しており、現代におけるスピード競争の象徴とも言える存在です。

Koenigsegg Jesko Absolut / ケーニグセグ ジェスコ アブソリュート | |
最高速度 | 約531km/h(330mph) |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | 5.0L V8ツインターボ / LST |
最高出力 | 1,176kW(1,600bhp)/7,800rpm |
最大トルク | 1,500Nm/1,500-5,100rpm |
生産台数 | 125台(ノーマルのJeskoを含む) |
販売価格 | 約340万ドル(約4.93億円) |
Hennessey Venom F5(ヘネシー ヴェノム F5)

ヘネシー ヴェノム F5は、アメリカで活動する有名チューナーのひとりであるジョン・ヘネシーによって設立されたヘネシースペシャルビークル社で制作されるハイパーカーです。 2017年のSEMAショーで発表されたオリジナルマシンで、カーボンモノコックを用いたボディの重量は1,338kg(2,950lb)と超軽量。 パワートレインは、6.6L V型8気筒OHVツインターボエンジンと7速トランスミッション(シングルクラッチ+パドルシフト)の組み合わせ。 「Fury」と名付けられたエンジンは、最大出力1,355kW(1,842PS)、最大トルク1,617Nm(1,193lb-ft)をそれぞれ発生(※E85混合燃料使用時)し、0-100 km/h加速は約2.6秒、1/4マイル加速は9.8秒で駆け抜けます。 カタログに記載された最高速度は500km/hですが、これまで公式に記録された最速度は271.6mph(約437.1km/h)にとどまっています。

Hennessey Venom F5 / ヘネシー ヴェノム F5 | |
最高速度(カタログ値) | 約500km/h(311mph) |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | 6.6L V8ツインターボ / 7速シングルクラッチトランスミッション |
最高出力 | 1,353kW(1,817hp)/8,000rpm |
最大トルク | 1,617Nm/5,000rpm |
生産台数 | 24台(他にロードスター30台、トラック仕様12台) |
販売価格 | 210万ドル(約3億円) |
Bugatti Chiron Super Sport 300+(ブガッティ シロン スーパースポーツ300+)

「究極のスピードとラグジュアリーの融合」を体現した、ブガッティのフラッグシップモデルがシロン スーパースポーツ300+です。 ヴェイロンの後継モデルとして2016年にデビューしたグランドツーリングハイパーカーであるシロンをベースに、エアロダイナミクスを改良したロングテールボディによって、高速安定性と冷却性能を高次元で両立しています。 パワートレインには、4基のターボチャージャー(4気筒あたり1基)を装着した8.0L W型16気筒クワッドターボエンジンを搭載。 最高速用に改造されたスペシャルが、2019年にドイツのテストトラック(エーラ・レッシエン)で、304.773mph(490.48km/h)を記録しました。

Bugatti Chiron Super Sport 300+ / ブガッティ シロン スーパースポーツ300+ | |
最高速度 | 490.48km/h(304.773mph) |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | 8.0L W型16気筒クワッドターボ / 7速DSG |
最高出力 | 1,176kW(1,600hp) |
最大トルク | 1,600Nm |
生産台数 | 30台 |
販売価格 | 390万EUR(6.3億円)*160円換算 |
SSC Tuatara(SSC トゥアタラ)

SSC トゥアタラは、アメリカのSSCノースアメリカ社が開発したハイパーカーです。 2020年のカリフォルニア州モントレーで開催された「ペブルビーチ・コンコース・デレガンス」で初公開されました。 カーボンファイバー製モノコックシャシーに搭載されるパワートレインは、5.9LのV8 OHVツインターボで、最高出力1,750hp(E85燃料使用時)を発生。 超軽量かつ高剛性なボディには、フォーミュラカー並みの空気の流れを実現するリアディフューザーとアクティブエアロを装備。空力性能にも優れており、Cd値(空気抵抗係数)はわずか0.279とアナウンスされています。 2020年の最高速チャレンジで311.15mph(511km/h)を叩き出すものの、正確性について疑問が呈されたことをうけて再検証を実施。 2021年に282.9hph (455.3 km/h)*H、2022年に295mph(474.8km/h)最高速をマーク。現在も虎視眈々と500km/h突破を目指して開発を進めています。*メーカーHPに記載

SSC Tuatara / SSC トゥアタラ | |
最高速度 | 295mph(474.8km/h) |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | 5.9L V型8気筒ツインターボ / 7速AMT |
最高出力 | 1,304kW(1,750HP) |
最大トルク | 1,735Nm |
生産台数 | 100台 |
販売価格 | 200万ドル(約) |
Koenigsegg Agera RS(ケーニグセグ アゲーラRS)

ケーニグセグ アゲーラRSは、スウェーデンのケーニグセグが生産したハイパーカーです。 2010年にジュネーブショーで発表されたアゲーラをベースとした上位モデルで、モノコック構造のカーボンボディやアクティブエアロシステム、油圧式サスペンションなど、先進技術が惜しみなく投入されています。 5.0L V型8気筒ツインターボエンジンの最高出力は865kW(1,160hp)。 2017年にアメリカ・ネバダ州の公道(州交通局協力のもと封鎖)で記録された447.19km/h(227.87mph)は、当時「公道走行可能な車両による実測世界記録」としてギネスに申請されました。
Koenigsegg Agera RS / ケーニグセグ アゲーラRS | |
最高速度 | 447.19km/h(277.87mph) |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | 5.0L V8ツインターボ / 7速DCT |
最高出力 | 865kW(1,160hp)/7,800rpm |
最大トルク | 1,000Nm/2,700‐6,170rpm |
生産台数 | 25台 |
販売価格 | 190万ドル(約2.8億円) |
Rimac Nevera(リマック ネヴェーラ)

クロアチアのEVメーカー、リマック社が開発したネヴェーラは、次世代のハイパーカーとして注目される電動モンスターマシンです。 4つのインホイールモーターによって、最高出力1,408kW(1,914ps)、最大トルク2,340Nmを発生。 高度なトルクベクタリング(Rimac's intelligent All Wheel Torque Vectoring system|R-AWTV)とアクティブサスペンション、AI制御などにより、高速走行時でも極めて正確な操縦性を提供するネヴェーラは、2022年にドイツのATP試験場において「市販EVとしての最高速度記録」となる415km/hをマークしました。 また0-100 km/h加速は1.81秒、1/4マイル加速は8.25秒という俊足を兼ね備えています。 カーボンモノコックボディにくわえて、高速充電対応の大容量バッテリーも車体構造に利用するなど、ネヴェーラは単なる加速自慢ではない完成度の高さも魅力。 電動ハイパーカーの未来を象徴する存在であり、テスラ ロードスターやアスパーク アウルのライバルともいえる存在です。

Rimac Nevera / リマック ネヴェーラ | |
最高速度 | 415km/h |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | インホイールモーター×4 |
システム最高出力 | 1,408kW(1,914PS) |
システム最大トルク | 2,340Nm |
生産台数 | 150台 |
販売価格 | 200万EUR(約3.2億円) |
Bugatti Veyron 16.4 Super Sport(ブガッティ ヴェイロン 16.4 スーパースポーツ)

ブガッティ ヴェイロン 16.4 スーパースポーツが2010年に記録した最高速度431km/hは、「市販車の最高速度記録」としてギネスに認定されています。 エンジンは、8.0LのW型16気筒クワッドターボで、最高出力882kW(1,200PS)、最大トルク1,500Nmをそれぞれ発生。 オリジナルのヴェイロンに比べ、エアロダイナミクス、シャシー剛性、冷却システムなどが大幅に改良され、より高い安定性を実現しています。 0-100 km/h加速は約2.6秒。生産台数は30台に限定され、その多くが世界中のコレクターやVIPに渡っています。 2001年にデビューしたヴェイロンは、現代ハイパーカー文化の礎を築いた1台として、いまなお色褪せることのない名車です。

Bugatti Veyron 16.4 Super Sport / ブガッティ ヴェイロン 16.4 スーパースポーツ | |
最高速度 | 431.072km/h |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | 8.0L W型16気筒クワッドターボ / 7速DSG |
最高出力 | 882kW(1,200ps) |
最大トルク | 1,500Nm |
生産台数 | 30台 |
販売価格 | 240万ドル(約3.5億円) |
McLaren Speedtail(マクラーレン スピードテイル)

マクラーレン スピードテイルは、英国マクラーレン・オートモーティブが製造したハイブリッドハイパーカーです。 スタリングはエアロダイナミクスを極限まで高めるために採用されたもので、全長5.1mのロングテールデザインが特徴。 パワートレインは4.0L V8ツインターボ+電動モーターのハイブリッドで、システム合計出力は787kW(1,070ps)。ゼロ発進から13秒で186mph(約300km/h)に到達し、最高速度は403km/h(250mph)に達します。 特筆すべきはF1譲りの中央運転席で、両脇に2座を配置した3人乗り構造。キャノピー風のコクピットデザインや、ミラーを廃したカメラ式リヤビューシステムなど、近未来的な演出も魅力です。 限定106台の生産で、マクラーレンの創業者ブルース・マクラーレンの哲学を受け継ぐ存在として、ブランドの頂点に君臨しています。

McLaren Speedtail / マクラーレン スピードテイル | |
最高速度 | 250mph(403km/h) |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | 4.0L V型8気筒ツインターボ+電動モーター / 7速DCT |
システム最高出力 | 787kW(1,070ps) |
システム最大トルク | 1,150Nm |
生産台数 | 106台 |
販売価格 | 157万ポンド(約3.3億円) |
Aspark Owl(アスパーク アウル)

アスパーク アウルは、日本のアスパーク社が手がける電動ハイパーカーで、世界最速の加速性能を誇ります。 4基(前後2基)のモーターが合計1,953hpの最高出力を発生し、最高速度は413km/hを記録。驚異的なのはその加速性能で、0-100 km/hが1.78秒、0-300 km/hは9.74秒で到達するとアナウンスされています。 ボディはフルカーボン製で、全高910mmという超低重心設計。ハンドリング性能も極めて高く、欧州で生産され、世界限定50台の生産です。 日本発のハイパーカーとして世界的に高い評価を受けているアウルは、最高速アタック用のSP600をリリース。2024年6月に、438.7km/hをマークして世界最速の電気自動車となっています。

Aspark Owl / アスパーク アウル | |
最高速度 | 413km/h |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | 高出力電気モーター×4 |
システム最高出力 | 1456kW(1980ps) |
システム最大トルク | 1,920Nm(4×480Nm) |
生産台数 | 50台 |
販売価格 | 290万EUR(約4.7億円) |
Koenigsegg Regera(ケーニグセグ レゲーラ)

ケーニグセグ レゲーラは、ケーニグセグ社が2016年から生産した革新的なハイブリッドハイパーカーです。 カタログの最高速度は255mph(約410 km/h)ですが、公式な記録はありません。 ただし、ゼロ発進から400km/hまで加速して、ふたたび静止するまでのタイム(31.49秒)が残されていますから、レゲーラが400km/h以上の最高速を記録することは疑いようのない事実です。 0-100 km/h加速は2.8秒以下。ICEとよばれる5.0L V型8気筒ツインターボエンジンに、3基の電動モーターを搭載し、システム合計出力(E85燃料使用時)は1,119kW(1,500hp)以上とアナウンスされています。 注目すべきは、トランスミッションに通常のギアを持たない「Koenigsegg Direct Drive(KDD)」という革新的なシステムを採用している点。これにより、機械的損失を最小限に抑え、シームレスな加速と高効率なエネルギー伝達を実現しています。 高級感あふれる内装、カーボンモノコックボディ、アクティブリアウィングなど、エンジニアリングとラグジュアリーを高次元で融合。80台のみ生産された、まさに芸術品とも言えるモデルです。

Koenigsegg Regera / ケーニグセグ レゲーラ | |
最高速度(カタログ値) | 255mph(410km/h) |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | 5.0L V型8気筒ツインターボ+電動モーター(×3)/ KDD |
システム最高出力 | 1,500hp以上 |
システム最大トルク | 2,000Nm以上 |
生産台数 | 80台 |
販売価格 | 190万ドル(約2,75億円) |
Bugatti W16 Mistral(ブガッティ W16 ミストラル)

ブガッティ W16 ミストラルは、ブガッティ最後のW16エンジン搭載モデルとして誕生したオープントップのロードスターです。 8.0L W型16気筒クワッドターボエンジンは、シロン スーパースポーツ300+と同様の仕様で、最高速度は実測で454km/hに達します。 空力設計に工夫が凝らされ、オープンボディにもかかわらず極めて高い安定性を実現。現時点で世界最速のオープンカーとしての称号を持っています。 全世界限定99台で生産され、ブガッティのガソリン時代に終止符を打つ記念碑的存在です。

Bugatti W16 Mistral / ブガッティ W16 ミストラル | |
最高速度 | 453.91km/h(282mph) |
パワートレイン(エンジン/トランスミッション) | W型16気筒クワッドターボ / 7速DSG |
最高出力 | 1,176kW(1,600hp) |
最大トルク | 1,600Nm |
生産台数 | 99台 |
販売価格 | 500万EUR(約8億円) |